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軌道上の安全を確保する「宇宙交通管理」と衛星データ利用に関するタスクフォースが開催

タスクフォースの締めくくりで発言する高市早苗・内閣府特命担当大臣(宇宙政策)

2024年3月26日、内閣府(東京都千代田区)にて「第2回宇宙交通管理タスクフォース」と、「第3回衛星リモートセンシングデータ利用タスクフォース」が相次いで開催され、高市早苗・内閣府特命担当大臣(宇宙政策)をはじめ、関係の副大臣・政務官らが出席した。

第2回宇宙交通管理タスクフォース

「宇宙交通管理」とは?

宇宙空間に、人工衛星やスペースデブリなどが増加する中、宇宙空間で物体同士が衝突する危険性が増加しており、多くの人工衛星などがデブリ等を回避する「マヌーバ」を頻繁に実施するようになっている。

このまま宇宙空間に存在する物体が増加し続ければ、人工衛星などが衝突で破壊され地上のサービスに影響が出るといったことも考えられる。

そこで、宇宙空間を持続的に安全に利用し続けるため、デブリが増加しないように対策したり、宇宙での軌道利用のあり方を管理することを柱とした「宇宙交通管理」の必要性が高まっている。

世界的に広がる宇宙交通管理の動き

2022年9月には、米国連邦通信委員会(FCC)が、2024年9月以降に打ち上げる地球低軌道(LEO)の商用人工衛星について、廃棄措置期限を運用終了後5年に短縮するルールを決定。

同じく2022年に欧州宇宙機関(ESA)もデブリの発生を大幅に限定する目標を示した「ゼロ・デブリ・アプローチ」を公表し、2023年には2030年のデブリ低減・改善のための数値目標を設定した「ゼロ・デブリ・チャーター」を公表している。

また、国内でも、2023年5月に開催されたG7仙台科学技術大臣会合とG7広島のサミットのコミュニケで軌道上デブリが喫緊の課題であるという認識が示され、2023年6月の「第5次宇宙基本計画」では、宇宙交通管理、スペースデブリ対策に関する新たな方針が示されるなど、世界的に宇宙交通管理への認識が高まり、各国が対策に動いていることがわかる。

Credit: 内閣府

今回のタスクフォースでは「中長期的な取組方針」が決定

26日に開催された本タスクフォースでは、「軌道利用のルール作りに関する中長期的な取組方針(改訂案)」が決定された。

2年前に行われた第1回タスクフォース以降の世界的な情勢の変化もふまえたもので、注目すべきは「人工衛星等との衝突防止に係るガイドライン」の案が策定されたこと。

この案は2024年度以降の制定が目指されているが、日本が国際的なルールメインキングを主導するかたちで将来の安全・安定的な宇宙利用を先導しているという点でも大きな期待がかかっている。

なお、日本では株式会社アストロスケールホールディングス(東京都墨田区、創業者兼CEO 岡田光信)がデブリ除去を始めとした軌道上サービスを提供する企業として世界的な存在感をもっており、2024年2月に打ち上げられた商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」の今後の成果も気になるところだ。

第3回衛星リモートセンシングデータ利用タスクフォース

衛星データ利用の現状

最近では農業や漁業、カーボンニュートラルなどの取り組みの中で衛星データの利用が進んでおり、また、地震や洪水など広範囲の災害が発生した際に迅速な状況確認が行えるツールとしての認知も進んでいる。

「第3回衛星リモートセンシングデータ利用タスクフォース」の冒頭では、農林水産省、環境省、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局や国土交通省といった官公庁で衛星リモートセンシングデータの活用が進んでいることが報告された。

衛星コンステレーションの活用促進に向けて

今後、より衛星リモートセンシングデータの活用を進めるため、政府ではすでに実用化フェーズにある民間サービスを「アンカーテナント政策」により支援し、利用拡大や衛星の機数増加の加速につなげたいとしている。

「アンカーテナント政策」とは、民間の製品やサービスを政府が継続的に調達することでその企業、ひいては産業そのものの成長につなげること。
NASAがSpaceXと契約して同社の打ち上げサービスが軌道に乗ったことがわかりやすい例と言える。

Credit: 内閣府

この日に決定された「衛星データ利用に関する今後の取組方針について」では、令和6(2024)年度からの3年間を「民間衛星の活用拡大期間」とし、「技術力を持った国内スタートアップ等が提供する衛星データを関係府省で積極調達・利用することで、さらなる投資促進の好循環を生み出すとともに、安全保障や国土強靭化、地球規模課題への対応に繋げることを目指す」とされている。

前述のように、衛星データは防災・減災や農林水産業に活かせるだけでなく、
アイデア次第でさまざまなビジネスを生み出せる可能性がある。宇宙交通管理とともに、今後の宇宙ビジネスにかかわるキーポイントとして押さえておきたい動きだ。

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