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【沖縄特集】下地島空港の活用で宇宙港へ発展!- 沖縄県庁

日本全国、北は北海道から南は沖縄まで、様々な地域で宇宙港を建設しようという動きがあります。宇宙港は宇宙機が頻繁に往来し、人々が宇宙へ旅立ち宇宙から帰還する出入り口とります。そこには自然と人が集まり、観光地や産業の集積地として発展していくことでしょう。現在、沖縄県の下地島空港は様々な活用が計画されており、宇宙港としての発展も期待されています。そこで、今回のインタビューでは沖縄県空港課 儀間氏、松川氏のお二人にお話を伺いました。

空港課 企画整備班 左:儀間 雅(主幹) 右:松川 祐(主任技師)

下地島で始まる宇宙産業

―本日はよろしくお願いします。沖縄県にある下地島では、空港の利活用事業を行っていると伺いました。その概要を教えてください。

下地島空港は本県の宮古圏域にあり、主に民間航空会社のパイロット訓練に用いていました。しかし、2011年度にJALが、2013年度にANAが訓練での利用を終了して以降、利用頻度が減少しました。下地島空港は、東アジアの中心に位置にするという地位的優位性や、広大な周辺用地を有する点など、多くの利点がある場所です。そこで、これを有効に活用して県の経済発展に寄与していこうということで、利活用事業が始まりました。

第1期は2014年に募集して2件採択、第2期は2017年に募集して1件採択し、利活用を進めています。第3期は2021年に募集して7件の候補事業を選定し、事業化に向け協議を進めています。

第1期に採択された2件は、FSO社による航空パイロットの養成事業と、三菱地所による旅客ターミナルの整備及び運営の事業です。第2期はPDエアロスペースの提案が採択され、下地島空港を利用した機体開発や宇宙旅行事業に向けた運営を展開しています。第3期で選定した7件の候補事業のうち概要を公表しているのは4件です。K・パートナーズによるサウス・アイランド航空という事業では、下地島の観光を目的とした遊覧飛行や離島を繋ぐチャーター便の運用、JMRSによる空飛ぶ学び舎事業では、航空業界を目指す学生や修学旅行向けの教育プログラムの実施が提案されています。ソフトバンクによるスマートエアポート事業では、無操縦者航空機によるモバイル通信サービスの提供、南西楽園リゾートによる観光リゾート事業では、MICE施設やゴルフリゾートの新設が提案されています。

青い海と砂浜

中程度の精度で自動的に生成された説明
下地島空港(17エンド)
提供:三菱地所(株)

―第2期のPDエアロスペースの事業が宇宙関連の事業ですね。宇宙港としての下地島の強みは何でしょうか。

まずは3000 mという長い滑走路があり、高度な空港機能を有していることです。PDエアロスペースは水平飛行型の宇宙往還機を使って宇宙旅行などのサービスを実施していく予定ですが、その開発や運用のためには長い滑走路は欠かせません。これを生かして、宇宙往還機が離発着する宇宙への玄関口を下地島に築いていくことになります。また周辺には広大な用地があるため、土地開発をして関連産業の展開ができます。第3期で選定した候補事業とも相乗効果を生み出し、新たな産業として発展させていけると期待しています。

―産業クラスターとしての発展も見据えているのでしょうか。

沖縄県として、那覇空港では航空関連産業クラスターの形成を目指し、航空機整備事業の拡大や、県内教育機関と連携して航空関連産業を担う人材の育成に取り組むこととしています。宇宙産業については、まず下地島空港で活用を進めていきますが、将来的には他の空港も宇宙産業への活用ができないか、検討しているところでもあります。

発展していく下地島空港

―近くには宮古島もあります。そうした周辺の空港との関係はどのようになっていますか。

まず定期便の運航としては棲み分けして運用しています。宮古空港はJAL、JTA、RAC、ANAが利用し、その他LCCやプライベートジェットは下地島空港を利用するようにしています。コロナ打撃はありましたが、下地島空港を利用する旅客数はかなり回復しています。

宮古島ではウルトララグジュアリークラスのホテル開業も予定されており、下地島空港でプライベートジェットの利用も増えることで、地域のブランド価値が向上することを期待しています。

―大きな下地島空港のポテンシャルを生かしていくわけですね。定期便や国際便を増やすこともあるのでしょうか。

これからの状況次第ですが、そのように発展させていきたいですね。下地島以外の島に行きたい人が増えても、下地島を経由地としてたくさんの人を案内できるようにする、そういう役割を担うインフラになればとも思います。また、コロナ前は香港への定期便が飛んでおり、今は運休していますが、地元とともに早期路線再開に向け取り組んでいます。

下地島空港旅客ターミナル
提供:三菱地所(株)

―民間主体で行っている下地島宇宙港事業推進コンソーシアムという取り組みがありますが、県としてはどのように関わっているのでしょうか。

このコンソーシアム自体は民間主体によるもので、宇宙港の設備建設は民間が自前で行いますが、宇宙港までの道路は沖縄県が社会資本として整備する形でバックアップしていくということで宇宙港の取り組みは始まりました。PDエアロスペースを中心とした民間企業が下地島の施設や土地を有効に活用して、宇宙往還機開発の実験場としてもらい、ゆくゆくは宇宙港を運営していくということになりますが、県は事業機会の提供者として、事業実施環境の整備に取り組むこととしており、いわゆる伴走者のような関わり方です。北海道の大樹町などの自治体は開始時点から事業者と行政が一体となって宇宙港建設を事業化していますから、この点は他の自治体と異なった対応となっています。

―あくまでも、下地島空港の利活用の一部として宇宙港の事業があるというわけですね。

様々な事業の展開を期待していますから、場合によっては宇宙港よりも先んじて実現していく事業もあるでしょう。ただ、宇宙港は観光の呼び水としての効果が非常に大きいと思っていますから、それを踏まえて受け入れの体制やその他レジャー事業も活性化していったらと思います。

―現在の課題はどのような点にありますでしょうか。

PDエアロスペースとよく協議して感じるのは、法規制をどうクリアするかという点ですね。あとはやはり、機体開発が容易ではないという点ですね。沖縄県から宇宙港事業への支援が相対的に物足りないと感じさせてしまう面はあるかもしれませんが、機体開発がもっと進んでいけば、地元の関心が高まり、宇宙港としてのまちづくりにもはずみがつくと思いますので、将来を見据えて相互協力を図っていきたいと思っています。

―最後に、下地島空港の発展に対する思いをお聞かせください。

沖縄は他の都道府県に比べて第二次産業がほとんどありませんから、宇宙港をきっかけとして機体整備などの事業が展開していくことを期待しています。いわゆる航空クラスターですね。そして、観光業への効果も加えてさらに下地島および沖縄県の発展に向けて取り組んでいきたいと思います。

以上、沖縄県空港課へのインタビューでした。美しい下地島は、長い滑走路や広大な土地があり、周囲は海に囲まれて飛行実験が可能であるという、宇宙港に最適な空港を有しています。この資産を活用して下地島をさらに発展させていくという沖縄県の取り組みに、今後も注目です。

                                      SPACE Media編集部