世界へ、そして宇宙へ事業を広げる株式会社エルム

「『想い』を『かたち』にそして世界へ」を企業理念とする株式会社エルムは、宇宙関連の事業に取り組んでいます。

特にロケットや衛星の電波受信などに取り組んでおり、現在は北海道・大樹町に本社があるインターステラテクノロジズ社とロケットの自動追尾システムを開発中です。

 

今回は株式会社エルムの和田健吾氏に、宇宙事業の取り組みや想いをお聞きしました。

 

■目次

(1)株式会社エルムとは

(2)エルムが手掛ける宇宙事業

(3)多くの人が使える製品技術へのこだわり

(4)若者に伝えたい宇宙×ものづくりの面白さ

 

(1) 株式会社エルムとは

株式会社エルムは、鹿児島県南さつま市に本社を構え、1980年に創業し今年で約40年の歴史を持つ会社です。

 

主な事業は農業から宇宙産業まで幅広い製品の研究・開発です。

特にLED照明では、特許取得の技術で高演色性(照明で物体を照らすときに、自然光が当たった際の色をどの程度再現するかの指標)を実現し、様々な場所で活用されています。さらには、独自の太陽追尾型発電システムや自動搬送ロボットを活用した栽培システム、人工衛星自動追尾装置等、ユニークな製品を多く取り扱っています。


株式会社エルムの本社(鹿児島県)

(2)エルムの宇宙事業の歴史

鹿児島県にはロケットの射場はあるのに宇宙産業に関わる地元企業が少ない。そのことが宇宙事業を始めたきっかけだと和田氏は語ります。

(以下、和田氏)

「創業後すぐに宇宙事業に参入し、高専や大学などに気象衛星の地上局を設置してきました。鹿児島大学のCubeSat打上げにも協力し、以降は低軌道の小型衛星に対応した地上局導入の実績を増やしています。

鹿児島県には種子島宇宙センターがありますが、国の事業のため民間が関わる機会が非常に少ないという状況でした。このままではメリットがなく、活用方法もない。

宇宙ビジネスが身近になってきたこのタイミングで、宇宙県を更に盛り上げるため、種子島でも内之浦でも民間を巻き込んで事業をしようという動きもスタートしています。」

 

株式会社エルムは1983年に宇宙関連事業に参入しました。

エプソン社と気象観測衛星「ひまわり」の高解像度受信システムを共同開発。さらに、1986年に海洋気象衛星「NOAA」の受信解析システムを大学や高校に導入しました。

2000年には、国立天文台のVERA計画で使用される電波望遠鏡の部品を製造しました。そして2002年には錦江湾公園に設置されている6m電波望遠鏡の一部装置を開発。この望遠鏡は当時、世界3番目のミリ波望遠鏡という大きさを誇っていました。

 

2010年からは小型衛星対応の地上局の開発などをスタートさせ、北海道大樹町にも地上局を設置しています。2019年以降は海外に地上局を納入し、衛星受信の役割を担っています。

 

2020年には、インターステラテクノロジズ社を支援する「みんなのロケットパートナーズ」という組織に加入。民間単独でより打ち上げ力の高いロケット「ZERO」の開発に向け、共同研究を進めており、2021年7月、観測ロケット「ねじのロケット」の打上げに成功しました。


北海道大樹町に設置されている地上局

(3)多くの人が使える製品技術へのこだわり

株式会社エルムが開発するパラボナアンテナは、軽量なメッシュ素材を選択できるという特徴があり、このアンテナはSバンド、Xバンドを受信します。

 

Sバンド、Xバンドとは人工衛星や探査機用によく用いられるマイクロ波のことです。Sバンドは遠くまで電波が届くという特徴がある一方で、Xバンドは受信できる範囲が狭く、一度に多くのデータを届けることできるという性質があります。そのため、Sバンドを使って人工衛星の機体を維持するための最低限のやりとりを行い、観測データのやりとりはXバンドで行われるという構成が多く存在します。

 

和田氏によれば、透けるメッシュ型のアンテナは、国内の製造メーカーで特注制作して、軽量化とコストの低減化を実現しているということです。また、予算を抑えることで、安価に宇宙事業に参画しようとする会社をサポートしたいとも述べています。

(以下、和田氏)

「通常、地上局を設置するには莫大な費用が必要です。

民間、また大学が宇宙開発を行うためにはまずこの費用がネックになります。そこでコストダウン提案として、地上局として求められる必要十分なスペックに絞った地上局を自社開発して提供させていただいています。JAXAスペックではありませんが、安定した運用実績を積み重ね、必要な機能を自社標準化することでコストを大幅に抑えています。」


フィリピンに設置された地上局

(4)若者に伝えたい宇宙×ものづくりの面白さ

インタビューに応じた和田氏は、日本全体で宇宙事業に関わる人材が少ない点を懸念しています。宇宙事業を通し、子供たちにものづくりの面白さを発信していきたいと熱く語ります。

(以下、和田氏)

「宇宙開発、特に人工衛星の開発をする人材不足は、小さい頃からわくわくする体験を得ることができない環境が一つの要因ではないかと感じています。人が夢中になって物事を行うとき、人の目はキラキラしています。ただ、そのわくわくの経験をしていない人が多いだけです。それを見つけられる環境が必要であると感じています。

 

このような現状から、市内の中学校に3Dプリンターを贈呈し、子供たちに考えたものを具現化させる取り組みの支援も弊社では行っています。ものづくりを小さいころから経験すると、物事の考え方が変わります。そのきっかけを提供し、宇宙産業に携わる人材を増やすことを目指しています。

 

また、弊社では新たな人材を大募集中です。気になる方は下記のホームページよりご連絡をお待ちしております。」

株式会社エルムHP:https://www.elm-recruit.com/

鹿児島で創業した株式会社エルムは、宇宙にまで事業を広げています。今後はどのようなアプローチで、さらに宇宙へ近づいていくのか期待です。

 



SPACEMedia編集部