2025年までに、再び宇宙飛行士が月面に着陸することを目指す「アルテミス計画」はアメリカのNASA(アメリカ航空宇宙局)の主導で行われ、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)や日本などの同盟国が協力します。
人類が最後に月に着陸したのは、1972年に実施されたアポロ17号です。それから50年間、人間は月面に足を踏み入れていません。
アルテミス計画では、月面の調査や研究、月へ行くための巨大ロケットや宇宙船の試験飛行を実施。そして、2025年に宇宙飛行士が月面へ再び着陸することを目指します。
その7つのステップを前編と後編に分けて、前編では、有人月着陸の前に必要な科学調査や技術実証を行う3つのステップを紹介します。
CLPS
アストロボティックの無人月着陸船「ペレグリン」(Credit: Astrobotic)
CLPSは、Commercial Lunar Payload Service(商業月輸送サービス)の頭文字です。月面に存在すると考えられている水などを探す科学調査、探査機や着陸機(ランダー)、ローバーなどの技術実証をするために実施されます。CLPSで得られた知見は、以後のアルテミス計画や月面基地建設などに役立てられます。
CLPSでは、NASAではなく民間企業がランダーの開発を行います。
2022年中頃から後半にかけて、アメリカの民間宇宙企業「Astrobotic (アストロボティック)」の無人月着陸船「Peregrine (ペレグリン)」が打ち上げられる予定です。
VIPER
VIPERは、Volatiles Investigating Polar Explorationと言われ、日本語にするとイメージがつきにくいですが、月の南極に存在すると考えられる水や氷を調査する探査ミッションです。
月の極域を探査するVIPERミッションではローバーが用いられる(Credit: NASA)
これまでNASA、インド、中国の月周回探査機は、極域に水や氷が存在することを明らかにしてきました。しかし、これらで発見された水や氷は探査機に搭載された機器によって発見されたので、実際に存在するかは、あくまで「推測」にとどまっています。VIPERミッションでは、1mのドリルを持った月面ローバーが実際に月の南極へ着陸し、水や氷の場所・分布を調査します。
CAPSTONE CubeSat
CAPSTONE Cubesatのイメージ図 (Credit: NASA/Daniel Rutter)
CAPSTONEは、月周回有人拠点「ゲートウェイ」が投入される特殊な軌道に初めて投入される予定の衛星です。ゲートウェイは、NRHO(Near Rectilinear Halo Orbit)軌道と呼ばれる特殊な軌道を周回します。近月点(月に最も近い点)が高度4,000km、遠月点(最も月に遠い地点)が高度75,000kmと非常に細長い軌道です。まだ一度も投入されたことがない軌道のため、キューブサットにより通信などの試験が行われます。
NRHO軌道は、近月点が4000kmで遠月点が75,000kmという非常に細長い軌道である。
(引用:文部科学省 米国が構想する月近傍有人拠点(Gateway)について 月周回拠点の軌道について 15p)
CAPSTONEは2022年5月に打ち上げ予定で、3ヶ月かけて月のNRHO軌道へ飛行します。その後、6ヶ月間のミッションを実施する予定です。
初期のアルテミス計画では、無人探査機による月探査を詳細に実施します。また、宇宙船が受ける影響などを調べる技術実証も行われます。後半では、これらの探査結果を元にして行われる有人月着陸段階を紹介します。
参考:
NASA Artemis PLAN NASA’s Lunar Exploration Program Overview p14
NASA, Commercial Lunar Payload Services Overview
文部科学省 米国が構想する月近傍有人拠点(Gateway)について 月周回拠点の軌道について 15p
SPACEMedia編集部