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NTT Dataが米Earth Observant社への出資により 防災・安全保障分野における国内の衛星データ販売事業に進出

Credit: NTTデータ

2022年11月25日、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(NTTデータ)は、同年8月3日、米国のColorado州Louisvilleに本社を置くEarth Observant, Inc.(EOI Space)の約2.5%の株式を取得し、さらに11月9日、EOI Spaceのグローバルアライアンスプログラムのパートナーとして衛星画像の販売に関する代理店契約を締結することで日本国内における独占販売権を獲得したと発表しました[1]。EOI Spaceは世界最高レベルの15cm分解能の光学センサーを搭載する地球観測衛星を開発中とのことです。

EOI Spaceの衛星の特徴

NTTデータのニュースリリースによると、EOI Spaceは同社が独自に開発した電気推進技術により超低軌道上を安定的に運行可能な観測衛星「Stingray(スティングレイ)」を開発および打ち上げ予定で、この衛星を複数組み合わせた「衛星コンステレーション」として運用することで、機体の開発・打ち上げコストを大幅に抑制しつつ、「解像度15cm」での撮影が可能な光学センサーを搭載することで高精細な画像を高頻度で撮影ができるようになります[2]

EOI Spaceのホームページによると、同社が開発した電気推進システムはHET-Xと呼ばれるホールスラスターであり、米空軍と協力していくつかのバージョンのテストが行われています[3]。2021年2月に発表されたHET-Xの真空試験結果では、入力電力レベル350〜2500W、20〜140mN、比推力1300〜2200ISPとなっています[4]。この独自開発のスラスターにより、地上250kmの超低軌道での飛行が可能になるとしています。

Stingray衛星は超低軌道の環境に対して最適化され、大気抵抗の影響を最小とするよう断面積を小さくしています。

さらに、Stingray衛星には画像を処理するコンピュータが搭載され、本来地上で処理を行う画像処理の一部を衛星上で行うことで、優先度の高いデータを伝送する時間が短縮されます。

VLEO(超低軌道)を利用する光学観測

EOI Space と同様にVLEOを利用した高分解能の光学画像の取得を計画しているのが、同じく米国のAlbedo Space Corp.[5](Albedo)です。AlbedoはEOI Spaceよりもさらに高精度の地上高分解能10㎝(Nadirにおけるパンクロマテティックバンド観測)を目指しています。30°のOff-Nadirにおける分解能は12.4㎝であり、広いOff-Nadirを標榜しているEOI Spaceと同等の分解能と考えられます。

高分解能画像データの扱いと利用分野

特筆すべきことは、昨年12月、NOAAがAlbedoに対して10㎝分解能の衛星画像の販売を許可したことです。NOAA Licensees(NESDIS)には軌道に未投入の衛星に対しても多くのライセンスが与えられていることが分かります[6]。EOI Spaceに対してもEarth Observantとしてライセンスが付与されています。

ニュースリリースの中でNTTデータは、観測衛星から顧客までの一貫したシステムを構築することで画像提供の高速化を実現する目的で、2023年に日本国内に衛星受信局を整備し、2024年12月からはEOI Spaceのデータを活用した衛星画像の販売開始を計画、AI解析による物体識別など、さらなる付加価値を提供するとしています。

本アライアンスの背景として、気候変動による災害の激甚化が進むなか被災状況把握等でより高頻度で高い解像度を持つ衛星画像に対する需要と期待の高まりや、安全保障分野における宇宙利用領域の需要の増大が挙げられるとNTTデータは述べています。

2019年12月14日、JAXAは超低高度衛星技術試験機「つばめ(SLAT:Super Low Altitude Test Satellite)」が、「Lowest altitude by an Earth observation satellite in orbit」としてギネス世界記録に認定されたと発表しています。SLATはJAXAが長年培ってきたイオンエンジン技術や衛星の追跡管制技術など人工衛星の開発および運用に関わる総合的な基盤技術をベースとして271.5 kmの軌道を保持した後、段階的に軌道高度を下げ、最終的にギネス認定の世界記録となった167.4kmの高度で7日間の軌道保持を行いました。この軌道保持においても、良好な画質の画像を取得しました。

つばめ(SLATS) 画像
JAXA つばめ(SLAT)のイメージ[7]
Credit: JAXA

これらを踏まえ、先行していた日本のVLEOによる高分解能衛星画像取得技術においても、国内における被災状況の早期把握、防災・減災分野での活用、および安全保障分野等に適用されることが期待されます。

参考文献

[1] NTTデータ ニュースリリース(https://www.nttdata.com/jp/ja/news/services_info/2022/112500/

[2] NTTデータニュースリリース(同上)

[3] EOI Spaceホームページ (https://eoi.space/

[4] HET-X Thruster Technology Tested by EOI (https://exterrajsc.com/het-x-thruster-technology-tested-by-eoi/2021/02/23/

[5] Albedo ホームページ(https://albedo.com/product-specs

[6] NOAA Licensees(NESDIS)(https://www.nesdis.noaa.gov/commercial-space/regulatory-affairs/licensing/noaa-licensees

[7] JAXA つばめ(SLAT)(https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/project/slats/

このニュースは文部科学省の令和4年度地球観測技術等調査研究委託事業「将来観測衛星にかかる技術調査」の一環で配信しております。