2022年12月22日、宇宙事業ベンチャー「スペースワン株式会社(以下スペースワン)」が和歌山県串本町で運営している、日本初の民間小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」が完成し、報道関係者らに施設の内部が公開されました。
2023年2月下旬に同社開発の小型ロケット「カイロス」初号機の打上げが予定されています。
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民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」について
「スペースポート紀伊」は、小型ロケットで人工衛星を打上げる商業宇宙輸送サービスを提供することを目的として建設された民間ロケット発射場です。
近年、技術進歩に伴い衛星の小型化が進み、通信や観測など、さまざまなビジネスでの活用が見込まれることから、小型衛星打上げの需要は増加する見通しです。これを踏まえ、スペースワンは顧客から預かった小型人工衛星を、同社の小型ロケットに搭載し、所定の衛星軌道まで運ぶという役割を担います。2020年代半ばには年間20機の打上げが計画されており、国内初の民間小型ロケット射場として、契約から1年以内に打上げるという「世界最短、最高頻度」をビジネスモデルとして掲げています。
射場全体の面積は約15ヘクタールで、ロケットをパーツごとに組み立てる整備棟や、パーツを合体させる移動式射点組立足場のほか、総合指令棟内の管制室などが建設されています。
串本町が射場選定された経緯
「串本町」がロケット射場に選ばれた理由は、①地元の理解と協力が得られる、②射点の南方および東方に陸地や島がなく開けている、③射点の周りに建物や人がいない、④本州の工場からアクセスがよい(機体の運搬がしやすい)などです。このような射場適地は全国でも少なく、「串本町」が射場予定地に選定されました。和歌山県は、今回のロケット射場立地に伴う地元への経済波及効果を、10年間で約670億円と試算しています。
「カイロス(KAIROS)」打上げについて
打上げるロケットは固体燃料3段式。全長約18メートルの小型で、重さ約23トン。太陽同期軌道では重量150キロまでの小型衛星を搭載でき、地球の観測などさまざまな用途への活用が期待されています。
同社は当初、第1号機の打上げ時期を2022年3月までとしていましたが、コロナ禍に加え、ロシアによるウクライナ侵略の影響により部品調達が遅れたことが要因で、これまでに2度延期されていました。当初予定していた時期から約1年遅れの打上げとなることについて、田嶋勝正・串本町長は「繁忙期の12月ではなく2月というのは、観光面からいえばありがたい。紀南地方を盛り上げる最大のチャンスとして、引き続き全面的に応援したい」と話していました。
通信や地球観測分野で世界的に小型ロケットの打上げ需要が高まる中、2月末予定の初打上げに注目が集まっています。