米国の宇宙スタートアップ企業Relativity Space(リラティビティー・スペース)は2023年3月22日(米国時間)、同社が開発した3Dプリンター製ロケット「Terran1」の試験打上げを実施しましたが、第2段エンジンが正常に点火しなかったことにより、所定の軌道に到達できず打上げに失敗したと発表しました。同社は今回の打上げで得られたデータをもとに詳しい原因を調査しているということです。
打上げの詳細
3Dプリンター製ロケット「Terran1」は同年3月22日午後11時25分(米国時間)、フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地の発射場から打上げられました。打上げから約80秒後、高度1万6,000mに到達し時速約2,000kmまで加速。機体への構造的な負荷が最大になる時間帯を乗り越え、Max-Qを超えるという今回の打上げで目標としていたポイントを見事クリアしました。しかし打上げから約3分後(X+180秒)、ロケットの第2段エンジンに点火できず、所定の軌道に到達できる見込みがないことから打上げ中止の指示が出され、打上げは失敗に終わりました。
同社は第2段エンジンが点火しなかった原因については調査中としており、今回打上げで得られたデータを詳しく分析するとしています。
今回の打上げについて、同社のArwa Tizani Kelly氏は「3Dプリンターで作ったロケットを軌道に乗せるという試みは、これまで誰もやったことがなかった。今回はうまくいかなかったが、3Dプリントされたロケットの打上げは可能だということを示す十分なデータを集めることができた」とコメントしました。
世界初の3Dプリンター製ロケット
Relativity Spaceが開発する「Terran1」は高さ33.5m、直径2.28m。最大1.25tのペイロードを地球低軌道に運搬できる2段式ロケットです。最大の特徴として、総重量の85%が3Dプリンターで作られており、従来のロケット製造方法よりも大幅に部品数を削減。同社によると、最終的には総重量の95%を3Dプリンターで製造することを目標としているということです。また同社は、3Dプリンターを使うことで60日以内にロケットを製造できると説明しており、今後の打上げで軌道に乗せられることが証明できれば、世界中で3Dプリンター製ロケットが浸透すると見込まれます。
2024年に打上げが予定されている「TerranR」
同社は将来的に、完全再使用の大型ロケット「TerranR」の開発を目指しており、2024年には初の打上げを計画しています。「TerranR」は高さ66m、直径4.9m。「Terran1」の16倍となる20tものペイロードを地球低軌道に運べるとされています。これにより、今後は月や火星に宇宙船を送り込むことも予定されており、「Terran1」からの大幅な打上げ能力の強化に注目が集まります。