衛星データを活用した土地評価サービスを提供するJAXA認定宇宙ベンチャーの株式会社天地人は2023年6月21日、同社が提供する宇宙ビッグデータを活用した水道管の漏水リスク管理業務システム「天地人コンパス 宇宙水道局」が、愛知県瀬戸市の都市整備部水道課に採用されたと発表した。同システムの自治体による採用は、今年4月の福島市水道局に続き2番目。
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近年、上水道の「水道管の老朽化」が原因で、全国各地で大規模な漏水事故が発生しており、対策として効率的に管路の点検・維持・修繕を実施することが求められている。
しかし、国内には約140,000km(全体の19.1%)の管路が法定耐久年数を超えており、既存の手法で経年管の点検・維持・修繕を実施するには、膨大な費用と時間を要する。
さらに、将来的には少子高齢化・人口減少に伴い、税収や職員数の減少が見込まれており、問題は深刻さを増す一方だ。
このような状況のなか、天地人は宇宙ビッグデータを活用した漏水調査支援ツールを提供し、水道管の漏水に関わる管理業務の効率化を支援している。
衛星データをAIで解析、漏水リスクを事前予測
同社が開発した「天地人コンパス 宇宙水道局」は、宇宙ビッグデータを活用して水道管の漏水リスクを管理するためのシステム。
複数の地球観測衛星から得られる、漏水に影響を及ぼす環境要因のデータ群(地表面温度、光学画像、気象データ、植生変化、SARなど)と、水道事業体が保有する水道管路のデータ(水道管の材質、使用年数、漏水履歴など)を組み合わせ、AI技術で解析することで、約100m四方の地区ごとに漏水リスクを評価できる。
さらに、さまざまな宇宙ビッグデータや地上データ、機械学習を組み合わせると、高リスク箇所で高い漏水発見率が示されるという。
本システムは、日常的に漏水地点を登録・管理することで、AIが蓄積した漏水データをもとに漏水リスクを再評価(精度向上が期待)することも可能。
同社が2022年度に行った内閣府との実証実験や他自治体へのヒアリングの結果によると、本システムによって点検費用が最大65%、調査期間が最大85%削減できたという。