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「宇宙」とのかけ合わせが変える不動産ビジネス ―SRC 2025レポート

宇宙産業は、ロケットや衛星の製造といった宇宙機器領域と、衛星データ活用などの宇宙ソリューション領域の大きく2つに分けられます。特に、宇宙ソリューション領域はすそ野が広く、かかわる産業領域も多いとされます(参考記事)。

そんな中、宇宙ソリューションと不動産ビジネスの接点から生まれる新市場の開拓を目指すイベント「宇宙×不動産カンファレンス2025」(SRC 2025)が2025年12月2日に開催され、宇宙業界と不動産業界のトップランナーたちによるセッションが展開されました。

この記事では、SRC 2025で編集部が注目したセッションの内容を、ダイジェストでお伝えします。


AI・デジタルの時代に勝つのはどちら? ―「地面師たち」VS「正直不動産」

左から、『地面師たち』作者で作家の新庄耕氏、モデレーターを務めた株式会社WHERE CEOの阿久津岳生氏、『正直不動産』原案者で作家・ルポライター・漫画原作者の夏原武氏

さまざまな切り口のセッションが企画されたSRC 2025の中でも異色、かつ目玉セッションとなったのが、「地面師たち」VS「正直不動産」です。

このセッションでは、2024年にNetflixで配信され、大きな反響を呼んだドラマ「地面師たち」作者で作家の新庄耕氏と、こちらもドラマ化され大人気となった「正直不動産」原作者の夏原武氏が登壇し、宇宙の技術やAIなどのテクノロジーが不動産取引をどう変えるのかについて、意見が交わされました。

モデレーターの阿久津氏は、衛星データという宇宙からの目で土地を見ることで透明性が増し、地面師のような詐欺はできなくなるかもしれないこと、またAIなどの活用によってアナログだった業務が効率化されていくと紹介しました。

これに対し、新庄氏と夏原氏は、実際の土地を自分の目で見て空気感を感じることは依然として重要だと指摘。夏原氏は、雑務や単純作業はAIが代替してもよいが、契約の最終段階は人が担うべきだと語りました。また、新庄氏も、衛星によって土地が把握できるようになったとしても、土地を売る人の気持ちまでは見えないと指摘。人の仕事はその「気持ち」に寄り添うことになるのではないかという見解を示しました。

両者とも、不動産業界においては「人」の要素が重要だという点で意見が一致しましたが、一方で、デジタル化などによる情報環境の変化で取引のあり方は変わりつつある、とも語られました。

また、このセッションでは、「地面師たち」「正直不動産」に宇宙が絡むとしたら? という阿久津氏の問いかけに、「『月面師たち』が出てくるかも」(新庄氏)、「『正直不動産 月面支店』ができるかも」(夏原氏)といった答えも飛び出しました。

もしかしたら、将来は宇宙×不動産をテーマにした新しいエンターテインメントも生まれるかもしれません。

衛星データの活用で変わり始める業界 ―宇宙データが動かすリアルな不動産市場

左から、モデレーターを務めた株式会社sorano me 代表取締役社長の城戸彩乃氏、三井不動産リアルティ株式会社 シェアリング事業本部事業推進部の大桑悠太郎氏、阪急阪神不動産株式会社 ソリューション推進部 仲介グループの阪口祐輔氏、福岡地所株式会社 事業創造部の道脇隆介氏、株式会社WHERE COOの西村仁氏

不動産業界のプレイヤーが中心となったセッション「宇宙データが動かすリアルな不動産市場」では、実際に衛星データが不動産業界でどのように活用できるのかについてのユースケースが各社から紹介されました。

同セッションに登壇した三井不動産リアルティでは駐車場用地の探索、阪急阪神不動産では投資・事業用地の探索、そして福岡地所ではマンション用地の探索に衛星データを活用しているとのこと。

衛星データ活用のきっかけとして、三井不動産リアルティの大桑氏は、現地調査を実施する前の「見立て」の精度向上を挙げ、阪急阪神不動産の阪口氏と福岡地所の道脇氏は土地所有者・地権者への直接のアプローチに活用できる点が衛星データ導入の契機だったと明かしました。

登壇した3社とも、扱う不動産のタイプは異なりますが、衛星データを活用することで提案の質が向上したことに加え、広域的にリスト化できることで全体を見渡せるようになり、土地の仕入れが効率化したとメリットを述べました。

各社の実践・活用例を受け、サービスを提供するWHERE COOの西村氏は「Deal(取引)Techとして、営業支援力を強化していきたい」とプロダクトのさらなる進化に向けた意気込みを語り、セッションを締めくくりました。

「宇宙実験室」付きの大学ができる? ―宇宙の空間を賃貸する時代が到来!

左から、モデレーターの株式会社WHERE CEO阿久津岳生氏、株式会社CHINTAI 代表取締役社長の奥田倫也氏、株式会社DigitalBlast 代表取締役CEOの堀口真吾氏

SRC 2025最後のセッションとして開催された「宇宙の空間を賃貸する時代が到来!」では、WHERE代表の阿久津氏をモデレーターに、賃貸プラットフォームを運営する株式会社CHINTAI代表の奥田倫也氏と宇宙環境利用支援などを行う株式会社DigitalBlastの堀口真吾氏が登壇。

宇宙空間を「借りる」ことができる世界では何ができるのかを語り合いました。

冒頭、国際宇宙ステーション(ISS)にある日本の実験棟「きぼう」を有償利用する際の民間事業者として指定されている企業の1社でもある、DigitalBlast堀口氏が「宇宙空間の利用」について紹介。ISSは科学実験や技術実証の場として利用されていますが、現状では物資や装置の打ち上げ・宇宙飛行士の作業料・実験後のサンプルの回収などに、それぞれ数百万円単位の費用がかかると説明しました。

一方で、微小重力(無重力)や宇宙線の存在など、地上とまったく異なる環境の宇宙で実験や実証を行うことは新たな発見の宝庫でもあるとし、創薬などのライフサイエンス分野や半導体製造などの領域で大きな魅力のある空間だと語りました。

続いて、賃貸情報プラットフォームを展開するCHINTAIの奥田氏が地上の賃貸ビジネスを解説。古代ローマ時代に起源があるという賃貸ビジネスですが、これはシェアリングサービスとして捉えられると述べ、現在ではシェアリングという考えは住まいだけでなく、働く場所や移動手段などにも浸透してきたと語りました。そのうえで、宇宙という空間も賃貸の対象になるのではと考えを示しました。

2人の話を受け、阿久津氏は、東京駅前のシェアオフィスにISSの空間利用も付加した想定を提示。

2,400坪、1,800人規模のシェアオフィスがあり、ここが月10万円で借りられるとして、ここをシェアする全員でISSの利用もシェアする場合、月額11万5,000円で「ISS付きシェアオフィス」が実現できるのではないか、と試算を示しました。

こうしたことが可能になる場合、奥田氏は、宇宙での実験機会を研究や教育に活用したい大学などがユーザーになるのではないかと感想を述べました。

これに対し堀口氏も、宇宙空間は研究の場としてもフロンティアであり、宇宙を活用することで新たな産業やソリューションの創出につながる可能性もあると期待を語りました。

奥田氏は、「大家と借り手」のような存在は宇宙空間でも生まれてくるのではと予想。宇宙空間の提供側と使用者側をつなぐ役割が担えるかもしれないと展望を述べました。

2030年にはISSの退役が予定されており、それに代わる民間宇宙ステーションの開発が進んでいる今、借りられる宇宙空間は増えていくことが想定されます。「スペース賃貸」が実現する未来も、それほど遠くないかもしれません。

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