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宇宙が、みんなのものになる -SPACE WALKERのスペースプレーンが宇宙を身近な場所にする-

19614月、ソビエト連邦(現ロシア連邦)が世界で初めて有人宇宙飛行を成功させてから約60年、2021年には民間人の宇宙旅行者の数が職業宇宙飛行士の数を上回りました。

 

株式会社SPACE WALKER(以下、SPACE WALKER)は、小型の有翼再使用ロケット(以下、スペースプレーン)を開発しており、2030年頃には開発しているスペースプレーンでの宇宙旅行の実現を目指しています。

今回は同社の代表取締役CEO眞鍋顕秀氏に、詳しいお話を伺いました。

 

SPACEWALKERとは

SPACE WALKERは、201712月に設立された東京理科大学発宇宙ベンチャー企業です。

同社共同創業者であるCTOの米本浩一氏は、1980年代より川崎重工にて、国家プロジェクトである再使用型有翼宇宙往還機の研究・開発に携わりました。

後に、米本氏は大学に籍を移し、そこで立ち上げた宇宙システム研究室で学生とスペースプレーンの研究を続けました。スペースプレーンの実証機であるWIRES014-3の打上げ実験に成功した事をきっかけに、事業化に向け株式会社SPACE WALKERを創業しました。

CreditSPACE WALKER

 

ECO ROCKET®︎

宇宙と地球の相互の持続可能性に貢献

SPACE WALKERが開発を進めているスペースプレーンは、再使用かつクリーン燃料を使用したECO ROCKETです。

現在に至るまで、ロケットは打上げの際にブースター等を切り離した後、そのまま海に捨てられてしまうのが当たり前でしたが、このスペースプレーンは海に何も廃棄されません。

さらに燃料には畜産排泄物から排出されるメタンガスを利用したバイオ燃料を使用宇宙と地球両方の持続可能性を追求した宇宙輸送システムです。

 

今後の宇宙開発利用市場の拡大・促進のために大きく貢献

飛行機の様に機体を繰り返し使う事により、低コストでかつ高頻度での打ち上げを可能にします。また、オートパイロットの誘導制御システムを採用する事で、パイロット育成にかかる時間と費用をカットして経済効率をあげられます。

 

地上等の水素社会への貢献

ECO ROCKETに搭載する、複合材性の高圧ガスおよび極低温液体推進薬の複合材タンクを開発中。極限まで軽量化を突き詰めたこの複合材タンクは、宇宙に限らず陸海空全ての物理的経済領域でも利用シーンが多く、地上では水素ステーションでの蓄圧器、空域では燃料電池ドローン用の燃料タンクなど、特に軽量化が求められる場面で活用が可能。

 

Credit:SPACE WALKER

 

宇宙だけでなく、地上にも恩恵をもたらすECO ROCKETですが、今後実現化するうえでいくつか課題があると眞鍋氏は語ります。

(以下、眞鍋氏)

ECO ROCKETの実現に向けて課題となることの一つが、有人宇宙飛行に関する法律が現在ないため、法制化を進める必要があることです。

また、地上におけるインフラも整備する必要があります。

近年、民間による宇宙旅行や新事業が次々と誕生している宇宙業界では、一刻も早い法整備が求められているようです。

ECO ROCKET2020年代に科学実験、小型衛星打上げ、そして2030年代には有人宇宙飛行サービスを本格開始する予定です。

 



想定されている今後の開発スケジュール

CreditSPACE WALKER

ECO ROCKETで手掛ける有人宇宙飛行

2030年にECO ROCKETを利用した有人宇宙飛行を目指しているSPACE WALKER。現段階では、滑走路より水平離陸し、高度120kmまで上昇数分間宇宙空間に滞在した後に滑走路へ水平着陸するサブオービタル飛行を行う旅程を想定しています。さらに2040年代に向けてオービタル飛行および宇宙空間を経由した高速2地点間輸送を目指しています。

どのような方々に宇宙旅行を利用していただきたいでしょうか?

宇宙を特別なものと捉えず、誰でも参加可能なプログラムにする予定です。宇宙を地球上から拡大する次の幅広い物理的経済領域と考え、ターゲット層を多様に想定しております。

宇宙観光にご興味をお持ちの幅広い年齢層の方々、またカップルやファミリー層、さらには出張の移動時間短縮を希望するビジネスパーソンなど多くの方に利用していただきたいです。

 


ECO ROCKET

CreditSPACE WALKER

 

SPACE WALKERが今後目指す宇宙業界

日本の宇宙産業に対して今後どのようなことを期待しているのか、眞鍋氏に伺いました。

(以下、眞鍋氏)

宇宙産業という言葉は無いと思っていて、地上のあらゆる産業が宇宙空間を新たな経済領域として利活用する事を期待しています。

日本は宇宙開発に長年取り組んでいる宇宙先進国として、そのノウハウを存分に発揮し、アメリカや中国に遅れを取ることなく、世界の宇宙開発をリードして行くべきだと考えております。

さらに、ビジネスを創出する場として宇宙空間を当たり前に使う世界を実現したいと眞鍋氏は語ります。

(以下、眞鍋氏)

宇宙空間を、陸海空と同じように物理的経済領域の一つとして利用する世界を目指しています。

この世界観の先には、地球で起きた大航海時代産業革命によるモビリティ革命ゴールドラッシュ未開拓の地への経済圏の広がりという一連の歴史が、宇宙を舞台に再び起きる事を想定しています。この時に産業革命で生まれた脱炭素の様な課題を宇宙へ持ち込まないために、ECO ROCKETの開発が必要になると考えております。

 

2030年には誰もが宇宙へ行き来できる時代が来るかもしれません。今後もSPACE WALKERの活躍に注目です。

SPACEMedia編集部