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職人が手掛けるアルミ加工―地上実証機の開発を支えるシューゼット

埼玉県戸田市にある株式会社シューゼット(以下、シューゼット)は、発明品の開発から製造販売、そして衛星や探査機の地上実験試作機の製作まで手掛けている企業です。

 

昭和35年の創立以来約半世紀に渡り、宇宙業界を支えてきたシューゼット。今回は、同社代表取締役である石田富照氏に宇宙事業に携わることに至った背景や、開発品についてお話を伺いました。


Credit:株式会社シューゼット

 

株式会社シューゼットとは

昭和35年、当時の社名は石田鉄工所として創立されました。

ロケットの地上実験機や衛星の地上実証機の製造など、宇宙業界では非常に重要な役割を担っている企業です。

鉄製品の設計や加工をしていた同社はなぜ宇宙事業に参入したのか、そのきっかけについて石田氏に伺いました。

(以下、石田氏)

「宇宙関係の製品加工を始めたのは昭和50年頃で、社名がまだ石田鉄工所の時です。きっかけは弊社の得意先に、宇宙ロケットや人工衛星の電装関連の会社があったことです。

その会社から、地上での実験で使う為の精密な縮尺模型を作れるかと打診があり、私の親父である当時の社長が一念発起で挑戦してみたら大成功し、今日まで続いているという流れです。」


Credit:株式会社シューゼット


アルミニウムの高い加工技術を持っていた石田鉄工所打診が来た当時は、宇宙製品の加工を行っていると認識がなかったと話します。

(以下、石田氏)

「最初は、普段より少しだけ難易度の高い加工品から依頼されました。その当時は実際に何を作っているのかは分かりませんでしたが、発注先の会社の方は、発注の度に少しずつ難度を上げる事で、我々の加工技術を試していた訳ですね。

最初は電柱工事で使うアルミ製の板から始まり、次にアルミ製の電装ケースや小物と言った具合に、段々と依頼内容が難しくなってきました。そして長いアンテナを受注した時、それが空港の管制塔で使うレーダーアンテナだと知り、その辺りから、まず航空製品の受注が増えてきました。その小さな実績が、その後のロケットや人工衛星のパーツの単品受注へと繋がり、今ではパーツ単品ではなく、イプシロンロケットや衛星モデルのように丸ごと一式で請け負えるになりました。」


Credit:株式会社シューゼット

 

同社が認められたアルミニウムの加工技術。

一体どのくらいの難しい作業であるのか、石田氏に伺いました。

(以下、石田氏)

「キーワードは溶接です。アルミは溶接が難しいのです。鉄の場合は溶接する際、熱で真っ赤になる現象が起きることで接合できたことを確認できます。一方で、アルミニウムは熱しても色が全く変わらないので、溶けて接合できたのかを目視で判断できません。迷って長く熱を当て過ぎると、アルミはいきなり溶けて無くなってしまうのです。

また、熱するのが弱すぎると後でヒビが入って強度的にエラーになってしまいます。ですからアルミ溶接は、職人泣かせと呼ばれています。」



Credit:株式会社シューゼット

 

ものづくりの上での想像力地上実証機の開発

ロケットの地上実験機であれば、HⅠロケット・HⅡロケット・HⅡAロケット、そしてイプシロンなど。また、衛星の地上実証機の製作では国内トップクラスの実績を持ち、小惑星探査機はやぶさを始め、火星探査機のぞみ、月周回衛星かぐや等の製作を行い、日本の宇宙業界を支える欠かせない存在となっています。さらに、成田空港の管制塔や滑走路付近にある大型のレーダーアンテナや、パラボラアンテナなどの製作加工も行っています。

 

地上実証機は衛星モデルとも呼ばれ、宇宙に打ち上げる前に、主に電装などを地上でテストをする為に使用されるものです。実際に打ち上げられるサイズと比べ、1/6などの縮尺サイズで製作を行います。

(以下、石田氏)

「実物サイズの場合は大きいため、中に入っての加工作業が可能です。しかし、1/6のサイズの衛星モデルの場合、中に入って作業することはできないので、すべて外側から組み立てができるような構造にしておく必要があります。

また宇宙に打ち上げるものですので、耐久性の面を考慮し、溶接という方法は割れる可能性があるため、最小限しか行いません。

どこにネジ穴を開けるかを考え、ネジでしっかりと組み立てるという点に最も知恵を絞っています。ものづくりの上でのイマジネーションが非常に重要となってきます。」

 



Credit:株式会社シューゼット

 

三宅島の帰島を救ったスピード開発力

シューゼットが宇宙関連製品のモノづくりで培ったのは開発力のスピードだと石田氏は語ります。この力を活かし、様々な特急品の開発も行いました。

(以下、石田氏)

「弊社が関わった開発製品の中で、最も思い出深いのは、大手化学メーカーからの依頼で手掛けた家庭用小型脱硫装置の製作です。これは2000年に噴火した三宅島の復興計画の際に使われました。噴火によって発生し滞留していた二酸化硫黄を除去する装置です。

2005年の春、三宅島の火山噴火によって、島外に避難された約4,000人の島民が帰島するにあたり、この家庭用脱硫装置の設置が絶対条件でした。ただ行政からの避難解除が正式決定しない限りは、元請けの化学メーカーにも脱硫装置の発注が下りて来ないので、私共もただ待つばかり、勿論それまでは何の準備も出来ません。ところが正式に避難解除が出ると、今度は一転して大騒ぎ、要するに納期との戦いです。結果として、発注から納品までの全工程がギリギリのスケジュールになりました。今思えば、普通は半年かけて行う開発を、実質1週間ほどで完了させた計算になりました。

試作・テスト・量産が同時進行という製品開発の離れ業を行いました。一箇所でもミスが許されない状況だったので、それこそイマジネーションの力が不可欠でした。」


Credit:株式会社シューゼット



シューゼットのスピード開発力なしでは三宅島の帰島は実現しなかったかもしれません。

「頭のイマジネーションの中でテストは既に終わっていた」と石田氏は語ります。

2000年に噴火があった三宅島の海岸線

 

ネットワークを武器に宇宙産業を発展させる

近年、ベンチャーの時代は終わり、宇宙業界はコスト競争の時代に入ってきたと語る石田氏。

これからは価格競争力が必要になってくるといいます。

「ネットワークを使うことが重要です。

すべての作業を自社で行おうとすると、すべて最新の工作機械を持つ必要があります。

そうではなく、強みが生かせるところは自社で請負い、得意でない部分は繋がりのある、最新の設備を持っている他社工場に依頼をする。

そのように外注を活用しながらパーツを揃え、一番難しいパーツの組み立て作業は、お得意のイマジネーションを活かして我社で行います。

外注工場の仲間たちの力が大変ありがたいです。町工場の仲間たちのお陰で、身の丈以上の大きい仕事をこなす事ができています。私共が持つモノづくり業界の分厚いネットワークは、私共の無形財産です。」

 

 

長年の経験で得た職人技とスピード開発力、そして分厚いネットワークで宇宙業界をリードするシューゼット。今後の新たな挑戦にも期待です。

 

Emily Ito