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「宇宙をもっと身近に」-完全自社製ロケット開発を目指すインターステラテクノロジズ

20195月、インターステラテクノロジズ株式会社は、観測ロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機」の打ち上げを実施し、民間企業単独としては日本で初めて宇宙空間に到達しました。MOMOに続く次のロケットとして、超小型人工衛星を打ち上げるロケット「ZERO」を開発しています。

「宇宙をもっと身近に」。そんな社会の実現を目指す同社はどのような想いをかけて開発を行っているのか。今回は、インターステラテクノロジズ株式会社の社長室室長・植松千春氏とビジネスディベロップメント部部長・熱田圭史氏にお話を伺いました。


超小型人工衛星打上げロケットZERO
Credit:インターステラテクノロジズ株式会社

 

インターステラテクノロジズ株式会社とは

 

―20131月に北海道大樹町で事業を開始されたとのことですが、最初に前身である「なつのロケット団」について詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?

植松氏 1980年のバブル時代にスペースシャトルが打上げられ、これから人類が宇宙へ行けるような時代が2000年代には来るのではないかと言われていました。そのような未来を実現していくため、小型ロケットをまず開発し、いずれは宇宙船をつくって宇宙に行こうということで立ち上がったのが「なつのロケット団」です。

JAXAのエンジニアである野田篤司氏の研究を基に、最小のロケットを実際に打上げようというところから始まりました。人材確保の点でも社員という形でメンバーを雇用する必要があるため、2013年にインターステラテクノロジズとして事業を開始しました。開発が進むにつれて加速度的にメンバーが増え、現在は約80人が携わっています。

 

低価格で打上げ可能な最小ロケットの開発を進めているとのことですが、なぜロケット開発はコストがかかってしまうのでしょうか。

植松氏 これまでの日本のロケット開発は、全体の取りまとめを頂点として下請けがいるというピラミッド構造になっているためにコストが高くなるという特徴があります。弊社では、ロケット開発のすべてを自社で行うことで、低価格化の実現を目指しています。

 

熱田氏 設計から製造までできるだけ自社で行い、中間業者を排除して、その分ロケットを安価なものにしていきたいと考えています。また、エンジンシステムの部品点数を大幅に削減することで低コスト化を図ったり、民生品を使ったりなど、あらゆる工夫を凝らしています。既に異業種からの人材もたくさん活躍しており、さまざまな分野で経験やスキルのある人材を募集しています。ロケットの開発に関係する技術は本当に幅広く、どのような分野のエンジニアでも活躍できると思います。

社員の皆さん
Credit:インターステラテクノロジズ株式会社

 

「誰もが行ける宇宙」へ

 

「誰もが行ける宇宙を」をテーマに掲げていますが、具体的にどのような世界を描いているのでしょうか?

熱田氏 観測ロケットMOMOに続くロケットとして、超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」の開発を進めています。日本での人工衛星打上げは年に34回程度で、そのコストも50100億円かかっているのが現状です。まずはこの打上げコストを下げ、宇宙にアクセスしやすい世界を実現することで宇宙利用が増えていくのではないかと考えています。

 

コストを下げ、打上げ回数を増やすことで宇宙へ行ける機会を増やすということですね。実際はどれくらいの打ち上げコスト削減を目指していらっしゃいますか?

植松氏 1桁億円を目指しています。約6億円程度です。

そのためには徹底したコスト削減とシンプルな設計、そして中間業者を排除しつつロケット全体としての最適化を行う必要があります。コア技術としてロケットエンジン・アビオニクスなどのキー・コンポーネントまでの技術を全て自社開発しています。

 

オールジャパンで宇宙を盛り上げる

北海道大樹町にある北海道スペースポート内に専用のロケット射場を持っていらっしゃいます。なぜ、ロケット射場地として大樹町を選んだのでしょうか?

植松氏 ロケットの打上げは東から南の間の範囲の方向に打上げますが、大樹町はその方向に海が開いています。赤道に近い方がいいのではないかと言われることもありますが、静止軌道に打上げる場合は正しいものの、近年主流となってきている地球低軌道に打上げる場合は、むしろ赤道直下より高緯度での打上げが有利とされています。。そのような理由から、大樹町は日本の中でベストな場所と考えています。

なるほど。大樹町は35年以上前から「宇宙のまちづくり」を進めている地域であるので、地元の方々のサポートもありそうですね。

熱田氏 大樹町はもともと防衛省のジェットエンジンの試験を行っていた場所であるため、環境アセスメントの観点から実験ができるとわかっていました。宇宙のまちづくりを掲げている町からも歓迎していただき、大樹町で開発を進めていくということになりました。

宇宙産業は行政との関わりがものすごく強い産業であるため、自治体が積極的に受け入れてくれていて事業も非常に行いやすいです。

北海道スペースポート内にあるLAUNCH COMPLEX-0
Credit:インターステラテクノロジ株式会社

 

みんなのロケットパートナーズ(みんロケ)やファンコミュニティも設立していますが、これらも地域全体で取り組んでいこうという事業の一環なのでしょうか?

植松氏 当社の事業は、いろいろな方々の支えで推進しているので「みんなのロケット」という価値観を大切にしています。競争相手は世界であるため、ロケット開発をオールジャパンでやっていくことが大事だと思っています。国内で協力し合って、日本で一番いいロケットをつくっていきたいです。

「みんロケ」加入企業も随時募集していますし、「自社で保有する技術を使ってほしい」「こういうことができるぞ」など技術スポンサードも含め募集しておりますので、いつでもご連絡ください!

インターステラテクノロジズが考える宇宙ビジネスとは

最後に、今後どのような宇宙産業を目指しているのか、ビジネスの観点での展望についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

植松氏 2021年、衛星開発の100%子会社であるOur Stars株式会社を設立しました。小型衛星の概念を覆すような、次のステージにイノベーションを起こすようなことができればと思っています。フォーメーションフライトや、惑星外の通信も含めてこれからの人類発展に必要な布石を先行して上手く打ちながら、人類の活動範囲を広げていくための取り組みができたらと思っています。

熱田氏 衛星データというのは、面を一発で捉えるというのを非常に得意とする分野であるため、線路の破綻や鉄塔の故障を把握するのが安易であり人件費の削減に繋がります。例えば、北海道という土地は過疎化が進んでいるため、産業を維持していくための人材不足解消にもなります。このように進めていくとSDGsの観点から循環型の社会になっていきます。

北海道スペースポートがあり、インターステラテクノロジズがあり、Our Starsがある。そして、地元住民が支えてくれているという文脈で、初めて宇宙産業が成り立ちます。地域に根ざした循環型のビジネスモデルの構築を目指していきます。

 

宇宙事業で地方創生を行っていく取り組みは本当に素晴らしいと思います。最後に、皆さんに伝えたいメッセージはありますか?

植松氏 インターステラテクノロジズでは積極的に採用を行っております。ロケット設計・開発・製造・運用のすべてを自社で行うことを目指しているため、通常では自社で抱えないような部門のポジションも含めて、幅広い分野の人材を募集中です。少しでも興味のある方はお気軽にお問い合わせください。日本の宇宙産業の未来を一緒に創りましょう!

 

求人情報:https://www.istellartech.com/recruit 

SPACEMedia編集部