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衛星データを生かし社会課題を解決する! 〜5/29開催CONSEOシンポジウムの見どころ解説

2023年5月29日に開催される衛星地球観測をテーマとした宇宙ビジネスのイベント、「CONSEOシンポジウム2023」。

衛星データは天気予報や防災、農業など、すでに多くの分野で活用されていますが、アイデア次第でより幅広い課題解決につながる可能性があり、民間ビジネスの大きなチャンスでもあります。

新規事業のヒントとなりそうな本イベントの見どころを、衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)事務局の平林毅氏にお聞きしました。

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平林 毅(ひらばやし・たけし)
CONSEO事務局/JAXA 第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター長

東京工業大学工学部機械工学科卒業。1986年4月、宇宙開発事業団(NASDA)に入社し、名古屋駐在員事務所にてロケット製造現場の監督などに従事。その後、ロケット打上げ部門、NASDA全体の計画管理/危機管理部門、政府系の衛星開発プロジェクトを担当。2003年10月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)発足後は、経営企画部・推進課長、衛星システム技術グループ・グループ長、衛星測位システム技術室長を務め、温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」GOSAT-2のプロジェクトマネージャ(2018年10月打上げ)を経た後、現職。

宇宙の利用・開発は民間が活躍する時代に

― 2022年に設立された「衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)」は、衛星地球観測のさらなる活用のために設立されたと伺っています。CONSEO設立の経緯を教えてください。

平林氏 宇宙のビジネスというと縁遠く思う方もいらっしゃると思いますが、近年、衛星を利用したビジネスが活発化してきています。宇宙開発利用はこれまで、JAXA(宇宙航空研究開発機構)をはじめとした官主導でしたが、民間が主体となった事業や、ベンチャー企業が出てくるようになりました。官と民が宇宙開発利用を共創・共働することが可能で、また必要な時代となってきました。

また、政府でも衛星戦略が議論されるようになりました。

衛星利用をより広げていくうえでは官と民の協力が欠かせませんし、国が制度やルールを整え、より衛星を使いやすい環境を整えることも重要ですし、商業化に際して引き続き先端技術の研究開発も必要です。産学官が議論して政策提言を打ち出していく重要性が高まっています。

こうした動向をふまえ、産学官で政策提言を議論し、市場づくりを進める場として設立されたのがCONSEOです。

私たちの暮らしを支える「衛星地球観測」とは?

― CONSEOがテーマとする衛星地球観測ですが、耳慣れない言葉です。普段の暮らしとどんな関係があるのでしょうか。

平林氏 現在、地球の周りには多くの地球観測衛星があります。気象衛星ひまわりなどは多くの方々に馴染みがあるのではないでしょうか。

地球観測衛星にはいろいろな種類があり、例えば、宇宙からデジタルカメラで撮影するように地表を撮像するもの(光学衛星)やレーダーを照射してその反射から地表面を観測するもの(SAR衛星)があります。後者のタイプは、デジタルカメラ型の衛星では撮れない夜間や、地表が雲に覆われているときにも画像を取得できます。光学衛星は、数10cmというレベルの解像度があり、1回の撮影で10km以上、中には50kmを超える範囲を撮影できるものもあります。また、SAR衛星では数mというレベルの解像度があります。

H-IIAロケット31号機/静止気象衛星「ひまわり9号」打ち上げ(撮影日 2016/11/02)
Credit: MHI/JAXA

平林氏 また、地球観測衛星としては、地表面の様子を画像としてとらえるだけでなく、地表面温度や大気中の水蒸気量、土壌の水分量、海面の水温などさまざまなデータを取得する衛星も活躍しています。

地球観測衛星で取得可能な代表的な情報の例
Credit: JAXA 地球観測衛星データサイト

平林氏 こうしたデータは農林水産業にも活用でき、現在では、衛星データを元に、漁業や農業を効率化するサービスを提供する民間企業も登場しています。

一般の方に地球観測衛星そのものが広く認知されているわけではないかもしれませんが、衛星データはすでに生活のさまざまな場面で活用されているのです。

衛星地球観測は地表や大気の情報を広範囲・詳細に収集できる点が強み。
防災や農林水産業だけでなく、気候変動に関するデータ収集・モニタリングなどにも活用されている
Credit: CONSEO

シンポジウムを通じ、ビジネスのヒントを

― 5月29日に開催される「CONSEOシンポジウム2023」では、産官から第一線の登壇者が集まります。デジタル&グリーンが大きなキーワードになっていますね。

平林氏 今回のシンポジウムでは、注目度の高いテーマとして、デジタル&グリーン、そして気候変動と安全保障の2つに焦点を当て、有識者による講演とパネルディスカッションを企画しています。

気候変動が深刻化し、また安全保障環境が厳しくなる中で、ビジネスを行う環境も大きく変化しています。先ほどお話ししたように、衛星データはすでにさまざまな分野で活用されていますが、ビッグデータである衛星データがデジタル技術と融合することで、環境や防災、安全保障といった重要な課題にもさらに大きく貢献できるポテンシャルを秘めているのです。

例えば、デジタルの視点では、衛星で得られた地球のデータを活用してデジタルツインを作り上げることで、それが基盤としてさまざまな課題解決に応用することが期待されています。また、グリーンの視点では温室効果ガスの吸排出量や森林の生育や伐採状況を観測することでESG活動に活かすこともできるでしょう。

このように、衛星データがどう活用できるかはCONSEO会員の皆さんとも議論しているところですが、各分野の有識者が議論を交わすシンポジウムに参加いただくことで、一般視聴者の方々も含めて、課題解決や新規事業のヒントを得ていただければと期待しています。

― シンポジウムに参加するときには、衛星地球観測に関する知識がないといけないでしょうか。事前準備は必要ですか?

平林氏 専門知識が必要というより、「衛星データ活用って面白そうだな」という観点でご参加いただきたいと思っていますし、そうした方も含めてさまざまな参加者にとって実りあるようなシンポジウムを企画しています。

実はCONSEOの会員構成において、いわゆる製造業の会員は2割程度です。データを利用してソリューションをつくる事業者や、金融関連、商社、自治体関係者、学会など多様な会員がいます。

「衛星を使って世の中にどんな便益を提供できるだろうか」という切り口のイベントですので、衛星そのものの知識より、「こんな課題があるんだけど、いい解決法がないかな」「こんなビジネスはないのかな」という関心がある方に参加いただきたいですね。

また、現地会場ではCONSEO EXPOとして12団体が展示を行います。大学や国の研究機関、衛星データ活用企業、衛星機器メーカなどの活動を知っていただき、マッチングの機会としてご活用ください。

衛星データを活用し「より良い未来」を築く

― CONSEOシンポジウム2023開幕を控えた思いをお聞かせください。

平林氏 CONSEOは、パーパスとして「より良い未来を志す産学官が集い、衛星地球観測の力で共に未来を描き、創り出す。」、ビジョンとして「地球まるごとより良い未来へ。」を掲げています。

今年3月には「提言 衛星地球観測の全体戦略に関する考え方について」をまとめ、そのなかで目指すべき将来像についても触れました。デジタルやグリーンという成長産業と、衛星地球観測が融合することで、よりよい未来を作り上げることができるはずです。

産学官の共創の場であるCONSEOを通じて、課題をもつ方とソリューション提供のポテンシャルをもつ方々の連携を生み出し、よりよい未来を築き上げたいと考えていますので、ぜひ多くの方にシンポジウムにご参加いただきたいと思っています。

Credit: CONSEOシンポジウム2023 特設サイト

CONSEOシンポジウム2023 開催概要

日  時:5月29日(月)13:30〜17:00
場  所:東京ポートシティ竹芝 ポートホール
(東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝 オフィスタワー1階)
会場参加:専用フォームによる事前登録制(定員:350名程度)
配信視聴:YouTubeでのライブ配信を予定(登録不要・URLは後日公開)
総合司会:桝 太一 氏(CONSEOアンバサダー/同志社大学ハリス理化学研究所 助教)
CONSEOシンポジウム2023公式ホームページ