地球観測プログラムCopernicusへの画像提供、EUが新たに9社と契約

Credit: ESA 参考文献 1

2023年6月19日、EUはCopernicus Contributing Missions(コペルニクス貢献ミッション、以下「CCM」とする)において、新たにヨーロッパのスタートアップ企業9社と、5年間500万ユーロ相当の地球観測画像提供に関する契約を締結したことを発表した。民間衛星とEU所有のSentinel衛星の両方を備え、地球観測データとサービス提供のための新しいプラットフォームであるCopernicus Data Space Ecosystemは、ハイブリッドモデルとして、官民双方による衛星データの強化とプラットフォームの持続可能性の向上により、衛星データ活用の更なる推進が期待される。

世界最大の地球観測プログラム・Copernicus

Copernicusは、ESA(欧州宇宙機関)が管理する世界最大の地球観測プログラムであり、TB(テラバイト)規模の無料でオープンな衛星データと情報を、毎日何十万ものユーザーへ提供している。Copernicusによって提供されるデータ・情報の大部分は世界中のあらゆる国民及び組織が無料でアクセス可能である。

Copernicusにより提供されるデータ及び情報は、これまではCopernicus Open Access Hubを中心に無料のSentinel衛星データへのアクセスや、DIAS(Data and Information Access Services)と呼ばれるCREODIAS等の5つのオンラインプラットフォームへアクセスし商用データセット等を一部有料で提供していた。2023年1月からは、これらを統合したCopernicus Data Space Ecosystemが試験運用開始となり、7月以降には本格運用となる。ここでは、大量のオープンで無料の地球観測データ、データ処理サービスやアプリケーション、サードパーティーのプロバイダーによる無料または商用のデータ、サービス、アプリケーション等への高速で簡易なアクセスが提供される。

これらの豊富なデータは、気候変動、自然災害、森林破壊などの差し迫った問題に対処し、資源管理や都市計画のための持続可能な戦略を開発することに役立つ。

Copernicus Data Space Ecosystemのダイアグラム
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Copernicus Data Space Ecosystemのロードマップ
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多様な衛星データで補完するCopernicus Contributing Missions

CCMはESA、その加盟国及びその他の商用衛星オペレーターによって実施され、高解像度の光学データやSARデータなどを提供し、Copernicus Sentinel Missionsを補完するものである。今後、Copernicus Data Space Ecosystemを通じて体系的に整理されたデータセットへアクセス可能となる。CCMは次のカテゴリに分類される。

  • SAR     :昼夜に陸地と海を観測
  • 光学センサ  :陸上の活動と海の変動を監視
  • 高度計システム:海面高さの測定
  • 放射計    :陸地と海の温度を監視
  • 分光計    :空気の質を測定

2021年後半には、ヨーロッパのスタートアップ企業として初めて、ICEYE社がSAR画像をコペルニクス画像プログラムに統合する契約に署名した。今回新たに追加された9社と提供する地球観測データは以下の通りである。

  • マルチスペクトル画像 :Aerospacelab(ベルギー)、Prométhée(フランス)、EnduroSat(ブルガリア)
  • ハイパースペクトル画像:Kuva Space Oy(フィンランド)
  • 熱赤外線データ    :Constellr(ドイツ)、OroraTech(ドイツ)、Aistech(スペイン)
  • 大気組成関連データ  :Satlantis(スペイン)、Absolut Sensing(フランス)

官民連携によるデータ・情報の強化と持続可能な運営への期待

政府系のプラットフォームプロジェクトでは、基本的には政府系機関が保有するデータの活用を推進しているが、衛星データをビジネスにて活用するためには、政府系機関の保有に限らず、様々な衛星データとのフュージョンが重要である。また、政府系プロジェクトでは、予算が確保されるものの期限付きであり、プラットフォーム構築後の自立性、持続可能性等が課題である。

上記課題に対し、Copernicus Data Space Ecosystemでは、①政府系プロジェクトであるが、官民双方のデータを収集・活用すると共に、CCMなどを通じてその強化を推進し続けていること、②無料のSentinel衛星データだけでなく有料データも組合せて持続可能なプラットフォーム運営を実現しようとしていること、の2点において、注目すべき事例であると考える。

今回の新たなCCMの追加により、Copernicusの衛星データ・情報はより一層強化され、また、持続可能な運営に寄与することとなり、ひいては、衛星データ活用の更なる推進が期待される。

参考文献

1)CCM概要 https://www.esa.int/esearch?q=Copernicus%E3%80%80Contributing
2)Copernicus Data Space Ecosystemのダイアグラム https://documentation.dataspace.copernicus.eu/_docs/CDSE-SDE-TSY_Service%20Description%20and%20Evolution.pdf
3)Copernicus Data Space Ecosystemのロードマップ https://dataspace.copernicus.eu/

この記事は文部科学省の令和5年度地球観測技術等調査研究委託事業「将来観測衛星にかかる技術調査」の一環で配信しております。