2025年までに、再び宇宙飛行士が月面に着陸することを目指す「アルテミス計画」―アメリカ・NASA(アメリカ航空宇宙局)の主導で行われ、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)や日本などの同盟国が協力します。
人類が最後に月に着陸したのは、1972年に実施されたアポロ17号です。それから50年間、再び人類が月面に足を踏み入れていません。
アルテミス計画では、月面の調査や研究、月へ行くための巨大ロケットや宇宙船の試験飛行を実施。そして、2025年に宇宙飛行士が月面へ再び着陸することを目指します。
その7つのステップを前編と後編に分けて、後編では、人類が再び月へ踏み出す4つのステップを紹介します。
4 アルテミス1
いよいよ人類が月へいく準備段階に入ります。アルテミス1では、NASAが開発した超巨大ロケット「Space Launch System(SLS)」と宇宙飛行士が乗り込む「オライオン宇宙船」の無人飛行試験を行います。オライオン宇宙船は、地球と月を往復します。また、打ち上げを実施するケネディー宇宙センター39B発射台など地上システムの試験を実施します。アルテミス1ミッションは、2022年4月以降に行われる予定です。
組み立て作業が大詰めを迎えるNASAが開発したSLSロケット
(Credit: NASA)
宇宙船の「相乗り」として、13のキューブサットが搭載され、科学実験や技術実証をします。日本は、2機のキューブサット「OMOTENASHI」と「EQUULEUS」を搭載し、月着陸技術や軌道制御実証などを行います。
SLS(Space Launch System) -月へ飛び立つ超巨大ロケット
Orion(オライオン宇宙船)―人類を約50年ぶりに月へー
5 HALO/PPE打ち上げ
HALOとPPEは、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の構成モジュールとして最初に打ち上げられます。
月周回有人拠点「ゲートウェイ」に近づくオライオン宇宙船
(Credit: NASA)
HALOは、居住機能を備えたモジュールで、「ミニ居住棟」と呼ばれます。アメリカのノースロップ・グラマン社が開発を担当。日本は、バッテリー分野で貢献します。
PPEは、「Power and Propulsion Element(電力・推進エレメント)」と呼ばれ、その名の通り電力や推進を担う重要な部分です。
HALOとPPEは、2024年にスペースX社のファルコン・ヘビーロケットで打ち上げられる予定です。打ち上げ後10ヶ月から12ヶ月かけて、PPEの推進機能を用いて、NRHO軌道へ移動(遷移)します。
6 アルテミス2
アルテミス2は、4人の宇宙飛行士がオライオン宇宙船に乗り込み、地球と月を往復する10日間の有人試験飛行です。アルテミス計画としては、初の有人ミッション。50年ぶりに人類が月から地球を見ることになります。
2023年に実施される予定でした。しかし、アルテミス3の時期が2024年から2025年と1年延期されたため、アルテミス2は、2024年に行われる予定です。
7 アルテミス3
いよいよ、アルテミス計画初の有人月面着陸となります。同時に、人類史上初めて女性が月に着陸する予定で、NASAは、“the first woman and next man” と表現しています。アルテミス3は2025年をめどに実施される予定です。
飛行士が月へ着陸するために使用される「月着陸船」は、HLS(Human Landing System)と呼ばれます。NASAが開発するのではく、民間企業が開発し提供します。NASAは、2021年4月17日に、SpaceXが開発する「Startship」を月着陸船として選定しました。
SpaceXが開発する「Starship」が月面着陸する様子
(Credit: SpaceX)
4人の宇宙飛行士を乗せたオライオン宇宙船は、まず有人月周回拠点「ゲートウェイ」にドッキングします。飛行士は、ゲートウェイに接続されている月着陸船に乗り換えて、月面へ降り立ちます。つまり、ゲートウェイが月面と地球の中継点となるのです。
アルテミス3のミッション
6と7が月面着陸のステップとなる
(Credit: ESA)
アルテミス計画のゴールは、宇宙飛行士が月面に降り立つアルテミス3ミッションではありません。月よりさらに遠い火星を目指します。月面に人類が住める基地を作ることで、火星へ行くための「中継地点」となります。アルテミス計画は、20年先、30年先の次世代まで続くミッションとなるでしょう。
参考:
NASA Artemis PLAN NASA’s Lunar Exploration Program Overview p14
NASA, Around the Moon with NASA’s First Launch of SLS with Orion
NASA, CUBESATS ON NASA’S SPACE LAUNCH SYSTEM
JAXA, アルテミス計画に関する各国の開発状況について p5, 7
SpaceNews, NASA delays human lunar landing to at least 2025
NASA, As Artemis Moves Forward, NASA Picks SpaceX to Land Next Americans on Moon
SPACEMedia編集部