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月の宇宙ステーション 月周回有人拠点「Gateway(ゲートウェイ)」とは?後編 〜モジュールと日本の役割とは?〜

NASAが主導して開発を進める有人月周回拠点「ゲートウェイ」は、地球と月面の中継地点として有人月面探査において重要な役割を担います。現在、地球低軌道上で運用されている国際宇宙ステーション(ISS)と同じように、「モジュール」(構成する機体)ごとに打ち上げられて、組み立てられます。モジュールの開発には、アメリカだけでなく、日本も大きく関わっています。

前編では、ゲートウェイの役割や国際宇宙ステーション(ISS)との比較を説明しました。今回は、ゲートウェイのモジュールと日本の関わりについて説明します。

 

 

(関連)月の宇宙ステーション 月周回有人拠点「Gateway(ゲートウェイ)」とは?前編 〜ISSとの比較でその正体に迫る〜 

 

ゲートウェイはどんな機体で構成される?


Source: NASA Office of Inspector General, NASA’s Management of the Gateway Program for Artemis Mission, November 10, 2020 P5 / NASA OIG presentation of Agency information

 

有人月周回拠点「ゲートウェイ」は、大きく分けて3つのモジュールから構成されます。電力を供給するPPE、居住空間と生命維持システムを備えたHALO、居住機能と研究機能をあわせ持つ国際居住棟I-HABです。この3つのモジュールは、地上で組み立てられて打ち上げられたのち、月周回軌道上で結合して運用されます。

 

また、宇宙飛行士をのせたオライオン宇宙船や月面に降り立つ月着陸船(HLSHuman Landing System)、ゲートウェイへ物資輸送をする輸送船などがドッキングする予定です。そのほかにも、船外活動をするためのエアロック(宇宙船内と宇宙船外を結ぶ場所)やロボットアームも設置されます。

ゲートウェイの完成想像図。右端にはオライオン宇宙船がドッキングしている
Credit: NASA/Alberto Bertolin

 

ここでは、3つのモジュールがどのようなものか明らかにしていきましょう。

 

  • PPEPower and Propulsion Element

PPEは、ゲートウェイの電力や推進、通信機能などを提供する部分です。上記の図にも太陽光パネルがついています。NASAの資料では、 the foundation of the Gatewayと表現されており、ゲートウェイの心臓部分であることが分かります。この機体は、アメリカ・コロラド州にある民間宇宙企業Maxar Technologiesが開発や組み立てを行います。

 

 

  • HALOHabitation and Logistics Outpost

ゲートウェイを訪れた宇宙飛行士が滞在する居住スペースです。生命維持装置も設置されています。その他にも、電力分布や温度調節、通信などオライオン宇宙船と宇宙飛行士をサポートするモジュールでもあります。

 

HALOには、複数のドッキングポートがあり、月着陸船(HLS)やI-HABを接続することができます。また、PPEなどに燃料を補給するESPRIT」モジュールがドッキングする見込みで、現在ヨーロッパ宇宙機関(ESA)によって2027年の打ち上げを目指しています。

 

HALOは、アメリカの大手民間宇宙企業ノースロップ・グラマンが開発を実施。2024年には地上でPPEと結合され、スペースXの「ファルコン・ヘビー」ロケットで打ち上げられる予定です。

PPEHALOの想像図。2つのモジュールは地上で組み立てられて打ち上げられる
Credit: NASA Johnson

 

  • I-HABInternational Habitat Module

I-HABは、日本語で「国際居住棟」と表されます。飛行士の滞在施設や実験・研究設備などがあります。このモジュールにより、飛行士が約30日間滞在することが可能になります。

また、飛行士が船外活動を行う際に、宇宙空間へ出るための「エアロック」も接続される見通しです。このエアロックは、ロシアの宇宙機関が開発する見込みで、2028年に打ち上げられる予定となっています。

NASAが公開したゲートウェイの最新構成図。モジュールの位置とともに参加協力機関の名前も分かる
Credit: NASA’s Gateway Program Twitter

 

ゲートウェイとアルテミス計画における日本の役割とは?

 

アメリカが主導して進められるアルテミス計画ですが、日本も大きく関わっています。

20207月に文部科学大臣とNASA長官の間で「月探査協力に関する共同宣言」が署名されました。この宣言の協力内容の実現を可能とする枠組みとして、20201231日に日本政府とNASAの間で、「月周回有人拠点ゲートウェイ了解覚書(MOU)」が署名・発効されるに至ります。

 

日本は、①居住に関わる基本的機能の提供 ②ゲートウェイへの物資補給という2つの分野で貢献すると発表されました。日本がこれまで培ってきたISS日本実験棟「きぼう」における有人宇宙技術が生かされます。具体的には、HALOへバッテリーの提供I-HABへ環境制御・生命維持装置の提供が行われます。

 

また、ISSへの物資輸送で活躍した宇宙ステーション補給機「HTV」(こうのとり)を改良した新型補給機「HTV-Xを用いて、ゲートウェイへ物資輸送を実施します。

 

日本側からの貢献に対して、アメリカ側は ①ゲートウェイの利用機会 ②日本人宇宙飛行士のゲートウェイ搭乗機会を提供するということです。これらの詳細は、今後詳しく決まっていくと考えられます。

 

月と地球の中継地点となる「ゲートウェイ」。日本に住んでいる人にとっては、遠い世界の話のように思われるかもしれません。しかし、日本も大いに関与し、宇宙飛行士の活躍も想定されており、日本人宇宙飛行士が月面に降り立つ日もそう遠くはないのかもしれません。

 

Source:

NASA Office of Inspector General, NASA’s Management of the Gateway Program for Artemis Mission, November 10, 2020 P5 / NASA OIG presentation of Agency information

https://www.oversight.gov/sites/default/files/oig-reports/IG-21-004.pdf

 

文部科学省研究開発局 宇宙開発利用課 宇宙利用推進室, 国際宇宙探査及びISSを含む地球低軌道を巡る最近の動向(2021.2.2

 

SPACEMedia編集部