2023年4月18日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は昨年10月に打上げに失敗したイプシロン6号機について、燃料タンクの内部に取り付けてあるダイアフラムの一部が破損して配管を塞ぎ、姿勢制御装置が作動しなかったことが失敗の原因だったと発表しました。
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イプシロン6号機打上げ失敗の詳細
イプシロン6号機は2022年10月12日午前9時50分43秒(日本時間)、鹿児島県肝付町にある内之浦宇宙空間観測所から打上げられましたが、第2段と第3段の分離可否を判断する時点で機体が目標姿勢からずれていることが判明。JAXAは、衛星を地球周回軌道に投入できる見込みがないと判断し、同日9時57分11秒に指令破壊信号を送信し打上げに失敗しました。
JAXAはこれまでの調査で、配管につながる燃料タンク内に取り付けてあるダイアフラム(半球状のゴム膜)が何らかの不具合で配管を塞いでしまったため、ロケットの向きを制御する「第2段ガスジェット装置」2基のうち、1基が正常に作動しなかったと推測。
その後、模擬の装置を使った検証や部品の製造データをもとに、ダイアフラムが配管を塞いだ原因について調査を進めていました。
失敗の原因は「燃料タンク製造時に起きたダイアフラムの破損」
2023年4月18日、JAXAは文部科学省の有識者会合で、ダイアフラムが配管を塞いだ理由について、燃料タンクの製造時に別の部品に挟まれたことでダイアフラムが破損したためだと断定。JAXAによると、ダイアフラムのシール部がタンク外周の部品とダイアフラムを固定する器具の隙間に挟まれたまま溶接したため、ダイアフラムの一部が破損し、仕切りとしての役割を果たせなくなったということです。これにより、推進薬はガス側に漏洩し、ダイアフラムは液ポートに覆いかぶさるように移動。この状態でパイロ弁が開かれたことでダイアフラムが配管を塞ぐ事態となってしまいました。
JAXAは「フライト実績品に対する確認不足があった」として、開発当時の設計の考え方や使用条件の根拠、製造工程などに立ち返って確認するなどの対策を取って信頼性を向上させたいとしています。
また、来年度の打上げが計画されているイプシロンの改良型ロケット「イプシロンS」の1号機については、原因となった燃料タンクの設計変更とH2Aロケットのタンク活用案を検討した上で対策を図る考えです。