月面資源開発に取り組む宇宙スタートアップ企業の株式会社ispaceは2023年6月9日、経済産業省、農林水産省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省の5省庁が募集を行った「日本スタートアップ大賞2023」において「審査委員会特別賞」を受賞した。同賞は「事業の新規性や革新性、グローバル市場への進出や社会課題の解決といった事業のビジョンなどに関し、特に評価の高い項目のある」企業に対して贈られる。
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日本スタートアップ大賞、新たなビジネスや起業家の活躍を表彰
日本スタートアップ大賞は、若者などのロールモデルとなるような、インパクトのある新事業を創出した起業家やベンチャー企業を表彰する制度で、2015年から実施されていた「日本ベンチャー大賞」が昨年から改称されたもの。起業を志す人々や社会に対し、積極的に挑戦することの重要性や起業家一般の社会的な評価を浸透させ、もって社会全体の起業に対する意識の高揚を図ることを目的としている。
今回、経済産業省、農林水産省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会が広く募集を行って「日本スタートアップ大賞 2023」を実施し、有識者で構成される日本スタートアップ大賞審査委員会が、全国から集まった337件の応募のなかから各賞を選出した。
各賞の受賞企業は以下の通り。
- 日本スタートアップ大賞(内閣総理大臣賞):スマートニュース株式会社
- グローバル賞(経済産業大臣賞):五常・アンド・カンパニー株式会社
- ダイバーシティ賞(経済産業大臣賞):株式会社ミツモア
- 農業スタートアップ賞(農林水産大臣賞):株式会社ビビッドガーデン
- 大学発スタートアップ賞(文部科学大臣賞):マイクロ波化学株式会社
- 医療・福祉スタートアップ賞(厚生労働大臣賞):株式会社ミライロ
- 国土交通スタートアップ賞(国土交通大臣賞):株式会社アンドパッド
- 審査委員会特別賞:株式会社ispace
- 審査委員会特別賞:株式会社CureApp
- 審査委員会特別賞:株式会社坪田ラボ
ispace、宇宙で経済が回る世界の実現を目指す
ispaceは2010年9月の設立以来「人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ」を長期ビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。
2040年代には1,000人が月面に居住し、年間10,000人が月を訪れ、建設、エネルギー、鉄鋼、通信、運輸、農業、医療、そして月旅行など、月の「水資源」を軸とした宇宙インフラが構築されることが見込まれている。
同社は、その宇宙インフラが地球で住む人々の生活を支え、地球も月も含めて宇宙全体がエコシステムとなる持続的な世界の実現を目指す。
宇宙資源探査・輸送・データ取得技術への応用が期待
同社のビジネスの中核を担っているのは、顧客の荷物を預かり月周回軌道/月面まで輸送する「ペイロードサービス」と、同社のランダーおよびローバーにスポンサーとしてロゴを掲載し、顧客のマーケティングを支援する「パートナーシップサービス」の2つ。
さらに今後、ペイロードやミッションにより蓄積されたデータへのアクセスを提供する「データサービス」の確立も見込まれる。
同社の顧客層は幅広く、政府以外にも国内外の多くの民間企業からペイロード需要を開拓しており、これまでに10か国で約380百万米ドルの契約金額を獲得している。
また、同社は2023年4月に世界初の民間企業による月面着陸「HAKUTO-Rミッション1」に挑戦し、10段階のマイルストーンのうちSuccess8(8段階目)までのマイルストーンで成功を収めた。今後、同ミッションで得られたデータやノウハウは、2024年に予定されている「ミッション2」および2025年の「ミッション3」で活用される予定だ。
同社は、今回の受賞について「審査委員会特別賞を受賞し、大変光栄に思っている」とツイートしている。