「ダボス会議」の主催などで知られる世界経済フォーラム(スイス・ジュネーブ、設立者/会長 Klaus Schwab)は2024年4月8日、マッキンゼー・アンド・カンパニーの協力を得て作成したスペースエコノミー(宇宙経済)に関する報告書『Space: The $1.8 Trillion Opportunity for Global Economic Growth(宇宙:グローバル経済成長1.8兆ドルの機会)』を公表した。
報告書では、グローバルなスペースエコノミー(宇宙経済)の規模は、2023年の6,300億米ドルから2035年には約3倍の1兆8,000億米ドルに拡大することが明らかになったとしている。
同報告書では、主要な調査結果として次の4項目を挙げている。
1.2035年までに宇宙がグローバル経済の重要な部分を占める
宇宙産業の成長は、宇宙技術、あるいは通信、測位、航法、計時、地球観測など、宇宙システムを活用したテクノロジーの普及によって大きく左右される。
2.宇宙が与える影響は、宇宙そのものを超えていく
既存の宇宙関連ハードウェアメーカーやサービス事業者がスペースエコノミー全体に占める割合は徐々に低下し、配車アプリのような新興企業が利益を得るようになる。
3.宇宙空間は、人とモノをつなぐものへと変化
サプライチェーンと輸送、食品と飲料、国防、小売、消費財とライフスタイル、デジタル通信産業は、2035年までにスペースエコノミーの増加分の60%以上を生み出す。
4.宇宙の投資対効果は金銭的なもの以上
災害警報や気候監視から、よりよい人道的対応、より広範な繁栄に至るまで、宇宙は収益を生み出すだけでなく、世界の課題を解決するうえでますます重要な役割を果たす。
また、スペースエコノミーは、打上げコストの低下や商業的イノベーション、投資とその使途の多様化などによって、今後10年間で大きく変貌するとも指摘している。
報告書の作成にかかわった、マッキンゼー・アンド・カンパニーのシニア・パートナー、ライアン・ブルカート氏は「農業、建設、保険、気候変動の緩和などの分野でますます多様化するビジネスが、新たに拡大するスペースエコノミーを牽引する可能性があります。官民のステークホルダーは、宇宙が持つ可能性を十分に理解して受け入れることで、スペースエコノミーのリーダーとしての地位を確立し、長期的な利益を引き出すことができるのです」とコメント。
地球観測や測位、通信といった宇宙システムを利用したテクノロジーやサービスが当たり前のように使われるようになった現在、「宇宙」は経済全体を牽引する重要なファクターになっていることがうかがえる。
報告書の全文(英語)は下記URLより参照できる。
https://www.weforum.org/publications/space-the-1-8-trillion-opportunity-for-global-economic-growth/