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「宇宙戦略基金」第二期、3省の技術開発テーマが出揃う

2025年3月26日、文部科学省・経済産業省・総務省はそれぞれのウェブサイトに宇宙戦略基金(参考記事)の実施方針と第二期の技術開発テーマを公開しました。
宇宙基本計画では、2020年に4兆円だった宇宙産業の市場規模を2030年代の早期に8兆円にまで拡大することを目指しており、宇宙戦略基金では、スタートアップを含む民間企業や大学等の研究機関への支援を通じて、日本が宇宙産業において国際的な競争力をもつとともに、自立して宇宙活動を行うための技術開発を進めるとしています。
各省のテーマは下記の通りです。これらのテーマに関し、今後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から公募が行われる予定です。
文部科学省
- スマート射場の実現に向けた基盤システム技術
- 有人宇宙輸送システムにおける安全確保の基盤技術
- 次世代地球観測衛星に向けた観測機能高度化技術
- 地球環境衛星データ利用の加速に向けた先端技術
- 空間自在移動の実現に向けた技術
- 空間自在利用の実現に向けた技術
- 軌道上データセンター構築技術
- 船外利用効率化技術
- 高頻度物資回収システム技術
- 月面インフラ構築に資する要素技術
- 月極域における高精度着陸技術
- 宇宙転用・新産業シーズ創出拠点
- SX中核領域発展研究
経済産業省
- 高頻度打上げに資するロケット部品・コンポーネント等の開発
- 高頻度打上げに資するロケット製造プロセスの刷新
- 射場における高頻度打上げに資する汎用設備のあり方についてのフィージビリティスタディ
- 衛星データ利用システム実装加速化事業
- 革新的衛星ミッション技術実証支援
- 宇宙機の環境試験の課題解決
総務省
- 衛星光通信を活用したデータ中継サービスの実現に向けた研究開発・実証
- 衛星光通信の導入・活用拡大に向けた端末間相互接続技術等の開発
- 衛星光通信の実装を見据えた衛星バス及び光通信端末の開発及び製造に関するフィージビリティスタディ
- 国際競争力ある通信ペイロードに関する技術の開発・実証
- 衛星通信と地上ネットワークの統合運用の実現に向けた周波数共用技術等の開発・実証
また、27日には下記の通り宇宙戦略基金ウェブサイトで公募予告も公開されています。
https://fund.jaxa.jp/content/uploads/yokoku20250327.pdf
欧州宇宙機関、2040年までの長期目標を発表
2025年3月20日、欧州宇宙機関(ESA)は、2040年までの主要な目標と目的を定めた戦略文書「ESA Strategy 2040」を発表しました(ESAによる発表)。
ESAは2021年4月に2025年までの戦略文書「ESA Agenda 2025」を発表していますが、「ESA Strategy 2040」はこれに続くもので、欧州全域の市民の生活のために宇宙が果たすべき5つの目標として、下記の5つが挙げられています。
- 地球と気候の保護(Protect Our Planet and Climate)
- 探査と発見(Explore and Discover)
- 欧州の自律性、強靭性の強化(Strengthen European Autonomy and Resilience)
- 欧州の成長力・競争力強化(Boost European Growth and Competitiveness)
- 欧州を鼓舞する(Inspire Europe)
自律性や競争力の強化といった文言からは、米国でのトランプ大統領就任に代表されるように自国優先主義が存在感を増す中、欧州としても独自に宇宙での能力を強化していこうという姿勢がうかがえます。
JAXA出資・Frontier Innovationsのファンドに中小機構らが加入 中小機構は最大25億円出資の構え

2025年3月27日、Frontier Innovations株式会社(東京都中央区、代表取締役社長 西村竜彦)は、同社が運営するFrontier Innovations 1号投資事業有限責任組合の新規の有限責任組合員として、中小企業基盤整備機構(東京都港区、理事長 宮川正、以下中小機構)とJA三井リース株式会社(東京都中央区、代表取締役 新分敬人)が加入したと発表しました。
なお、中小機構とは最大25億円の出資で合意しているとのことです。
同ファンドは宇宙航空研究開発機構(JAXA)からのアンカーLP出資(ファンド初期に大幅な出資を行うこと)を受けた初のファンドであり、宇宙領域のほか、クライメイト(気候)テック、AI、ロボティクス等、非宇宙分野のディープテックスタートアップのシード・アーリーステージを主な対象としてリード/ハンズオン投資・支援を行っています。
宇宙領域は研究開発フェーズの長い取り組みが多いため、こうしたファンドの拡大により、宇宙系スタートアップの支援が広がることが望まれます。
国際宇宙ステーションの船内ドローン「Int-Ball2」のシミュレーション環境を公開
2025年3月25日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)有人宇宙技術部門は、国際宇宙ステーション(ISS)船内で稼働しているドローン「Int-Ball2(イントボール2)」のユーザープログラミング機能向けROS/Gazeboシミュレータを公開したと発表しました。
下記GitHubからシミュレータを確認できます。
https://github.com/jaxa/int-ball2_simulator
Int-Ball2は、ISS「きぼう」日本実験棟で宇宙飛行士のカメラ・撮影作業を支援する船内ドローンですが、カメラロボットとしての利用以外にも、外部ユーザーが作成したプログラムを組み込んで実行し、宇宙実証を行えるプラットフォーム機能を備えています。
シミュレータの一般公開について、JAXA有人宇宙技術部門では、宇宙ロボット技術の研究加速に加え、宇宙環境でのSTEM(科学・技術・工学・数学)教育の促進、エンタメ領域での利活用の発展などを期待するとしているほか、多くの人がInt-Ball2に触れ、そのアイデアがフィードバックされることでInt-Ball2の機能向上にもつなげていきたいとしています。
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