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国内外のトップリーダーが集結した3日間 宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2022」を振り返る

一般社団法人SPACETIDE(以下、SPACETIDE)が主催するアジア最大級の宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2022」が、2022年7月19日から21日の3日間、開催されました。

7回目の開催となる「SPACETIDE 2022」は、「宇宙ビジネスは、新たな価値を届ける」がコンセプト。3日間にわたり、宇宙ビジネスが私たちの社会や生活、文化、未来に何をもたらすのか、議論されました。

ここでは、「SPACETIDE 2022」の3日間を振り返り、トークセッションや基調講演(キーノート)の中から、3つのプログラムをご紹介します。

前回のイベント紹介記事はこちら:https://spacemedia.jp/news/2382

「SPACETIDE 2022」公式サイト:https://spacetide2022.webflow.io/

エンターテイメントとメタバースにおける衛星利用の新たな可能性

【セッション概要】

【DAY1】衛星利用の新たな地平:エンターテイメントとメタバース

Speaker:関根知美氏(ソニーグループ株式会社 宇宙エンタテイメント推進室 営業企画)

Moderator:藤原寛朗氏(一般社団法人SPACETIDE Space-Enabled World プログラムマネージャー)

Speaker:佐藤航陽氏(株式会社スペースデータ 代表取締役社長/株式会社レット 代表取締役社長/株式会社メタップス 創業者兼会長)

Moderator:梅澤高明氏(CIC Japan 会長/A.T.カーニー 日本法人会長)

宇宙×エンターテイメントを手掛けるソニーグループより、関根知美氏が登壇しました。関根氏が「宇宙を身近なものにしたい」と話し、8月23日までのクラウドファンディングで第1期クルーを募集中の人工衛星に搭載されたカメラを自分の手で操作し撮影可能な「STAR SPHERE(スタースフィア)」プロジェクトなど、取り組む宇宙事業について紹介しました。

ソニーグループの「STAR SPHERE」プロジェクト特集記事: https://spacemedia.jp/news/2555

また、「テクノロジーで新しい宇宙を作ろう」と掲げるスペースデータの代表取締役社長・佐藤航陽氏は、「この世界の本質は情報だと思っています」と強く語りました。佐藤氏は「世界2.0 メタバースの歩き方と創り方」(幻冬舎)の著者としても注目を集めています。

セッション中に流されたバーチャル空間に再現された街並みの動画は、実際に街を撮影したと見間違えるかのような鮮明さでした。衛星データとAI技術、3DCGの活用について佐藤氏は、「自動車会社様などには、自動運転のシミュレーションとして、地上を再現できないかと声をかけていただいています。また、バーチャル空間に新たな宇宙も作ることができると思っています。月面探査をするうえでのシミュレーション、スペースデブリ(宇宙ごみ)の衝突のシミュレーションなどにも使えると考えています」と、さらなる可能性を語りました。

セカンドキャリアは“宇宙への水先案内人”? 野口聡一氏がこれからの宇宙業界を語る

【セッション概要】

【DAY2】人類の宇宙進出の先にある未来社会

Speaker:野口聡一氏(宇宙飛行士/合同会社未来圏 代表/株式会社国際社会 経済研究所 理事)

Moderator:榎本麗美氏(J-SPARCナビゲーター/宇宙キャスター®/一般社団法人そらビ 代表理事)

6月1日付けでJAXAを退職した野口聡一氏が登場し、“セカンドキャリア”やこれからの宇宙業界について語りました。

近年、民間企業によるロケットの打ち上げや民間人の有人宇宙飛行など民間による宇宙ニュースが相次いでいます。日本国内でも、宇宙ベンチャーの活躍が盛り上がりを見せています。野口氏は、「JAXA、NASAでの26年間の中で、最後の2年間のSpaceX生活で多くを学びました。あの組織がすごいのは、1つは改革のスピードが速く、アジャイルな組織。次に考えがフレキシブルであること。3つ目はドラスティックな変革を行うこと。失敗するが、JAXAやNASAが報告書をあげている間に、改良して次のロケットを上げています。反省は必要だが、反省している時間があれば、改善するという組織です。とても勉強になったし、参考にしてほしいです」と、宇宙ベンチャーにエールを送りました。

最後に、これからの野口氏個人のキャリアについて質問が投げかけられました。プロ転向したフィギュアスケートの羽生結弦選手の会見を話題にあげ、野口氏は「羽生選手のように引退という言葉は使いたくない。宇宙に行くことはやめていないので。民間人として違った高みがあると思います。水先案内人として宇宙に行っているかもしれません」と20分間のトークを締めました。野口氏の今後のキャリアにも注目ですね。

宇宙キャスター® 榎本氏が総合司会を務める総合宇宙イベント「SpaceLINK」のイベント紹介記事:https://spacemedia.jp/news/2623

ispace、2022年11月に打上げを発表した月面探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション1を語る

【セッション概要】

【DAY3】Keynote

Speaker:袴田武史氏(株式会社ispace Founder & CEO)

早ければ2022年11月に月面探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション1の打上げを発表したispaceの袴田武史氏は、順調な進捗具合を報告しました。日本企業初の挑戦に、袴田氏は「月に向けて打上げを行います。この瞬間を待ち望んでいました」と笑顔で語りました。

基調講演内では、月着陸船(ランダー)の組み立て作業の様子を撮影した動画や、エンジニアたちが笑顔で片目のダルマを抱える写真が流れました。袴田氏は「ランダーの開発は最終段階に来ていて、全てのストラクチャーの組み立てが終わっています。実施中のシステムテストも問題なく進んでいます。近いうちに、ダルマの2つ目の目が黒くなることを祈っています」と話します。

また、ispaceの管制室(Mission Control Center:MCC)は日本橋三井タワーの「X-NIHONBASHI TOWER」内にあります。袴田氏は「MCCの中には入れないが、皆さんもMCCの中の様子を見ることができます。ぜひ、ミッション中にMCCに来てください!」と呼びかけました。月着陸船を遠隔で制御する様子を目の前で見ることができるのは、ワクワクしますね。

ispaceが初めて日本のスタートアップとしてR&D助成を受けたルクセンブルクの宇宙ビジネスの取り組み特集記事:https://spacemedia.jp/news/1892

宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2022」のトークセッションや基調講演(キーノート)の中から、3つのセッションをピックアップし、ご紹介しました。

この3日間、日本国内、そして世界の宇宙ビジネスの最新情報が盛りだくさんでした。宇宙ビジネスはますます加速していくことが予想されます。「SPACETIDE 2022 YEAR-END」の今年12月の開催も発表。宇宙ビジネスの最前線をキャッチアップしたい方は、12月の開催が決まった次回のカンファレンスに参加してみてはいかがでしょうか。