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新型H3ロケット17日打上げへ 延期理由は「観測気球」も関係

H3ロケット試験機1号機 飛翔イメージ
Credit:JAXA

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2023年2月15日、先進光学衛星「だいち3号」を搭載したH3ロケット試験機1号機(H3・TF1)を同年2月17日10時37分55秒に打上げると発表しました。予定時刻に打上げができなかった場合、当日の打上げ可能時間帯は10時37分55秒~10時44分15秒となります。当初12日に打上げ予定でしたが、後述の理由により17日に延期され、計5日の延期となりました。この記事では、延期理由と歴代ロケット「1号機」の延期事情、そして打上げのスケジュールについてご紹介します。

※なお、H3ロケットと搭載衛星「だいち3号」の概要については関連記事を参照ください。

関連記事

新型ロケット「H3」試験機1号機 2023年2月12日打上げ(23年1月)

打上げ延期理由

今回の打上げは3回延期されました。

1回目は、2023年2月12日から13日への延期です。H-IIAロケット46号機が予定より1日延期されて2023年1月26日に打上げられたため、H3・TF1の打上げ準備作業に影響が出たことによるものでした。

2回目は、同年2月13日から15日への延期です。ロケット打上げ直前には「ラジオゾンデ」という気象観測気球(バルーン)を飛ばし、風の状況を踏まえて飛行計画を更新します。この更新情報はロケットに伝えられ、その情報に基づいて飛行を行いますが、今回はロケット側で正しい更新処理が実施できていなかったのです。これを修正して動作を確認するために、2回目の延期がなされました。今回の事象が起きた理由について、H3プロジェクトマネージャの岡田匡史氏は「飛行計画の作成方法や搭載機器をH-IIAから変更したことに伴うもの」としています。

3回目は、同年2月15日から17日への延期です。15日の気象条件のうち、風の条件が整わないことから、「万全を期して」延期されることになりました。

ダイアグラム

自動的に生成された説明
飛行計画更新のイメージ
Credit:JAXA
草, 屋外, フィールド, スポーツゲーム が含まれている画像

自動的に生成された説明
「ラジオゾンデ」放球の様子 写真はH-IIAロケット23号機打上げに伴うもの
Credit:JAXA

歴代ロケット「1号機」の延期事情

H3ロケット初めての打上げとなる今回は、当初の予定日から計3日の延期となりましたが、今までのロケットはどうだったのでしょうか。ここでは、歴代ロケット「1号機」の延期事情を見ていきましょう。

まず、現在運用されているH-IIAロケット。当初2001年8月25日に予定されていた試験機1号機の打上げは、第2段液体酸素タンクの圧力調整弁に不具合が発見されたため、4日延期されました。(※1)

次に、H-IIAロケットの先代であるH-IIロケット。当初1994年2月1日に予定されていた試験機1号機の打上げは、天候不良のため2日、さらに衛星を保護する「フェアリング」と地上設備とを繋ぐ「アンビリカルキャリア」が誤って離脱したことにより1日、計3日延期されました。(※2)

そして、先日の6号機打上げ失敗が記憶に新しいイプシロンロケット。当初2013年8月22日に予定されていた試験機(1号機)の打上げは、地上装置の不具合により5日延期され27日となりました。(※3)さらに27日は、地上装置とロケット搭載計算機との時間のずれを考慮できていなかったため打上げ直前に中止となり、対応のため18日再延期され、(※4)計23日延期されました。

このように、各ロケットの「1号機」には初物ならではの難しさが付きまとうようです。ちなみに、H-IIBロケット試験機(1号機)は延期することなく2009年9月11日に打上げられましたが、これは本機がH-IIAロケットと極力同一の仕様と構成を維持した(※5)ことも影響しているといえるでしょう。

H-IIロケット試験機1号機の打上げ 朝日を背に
Credit:JAXA

打上げスケジュール

最後に、打上げスケジュールを予習しておきましょう。2月16日の16時から機体移動が開始され、移動発射台(ML5)に乗せられた機体はVAB(大型ロケット組立棟)からLP2(第2射点)へと移動します。22時過ぎからは推進薬の充填が始まります。日付が変わって、17日の打上げ10分前(10時27分頃)には最終GO/NOGO判断が行われ、打上げを行うかどうか、最終的な決断が下されます。X-480(打上げ480秒前)には秒読みが開始され、X-15に全システムの準備が完了。X-6.3にメインエンジン「LE-9」が燃焼開始し、10時37分55秒にリフトオフとなります。

リフトオフ後、X+116頃に補助ロケット「SRB-3」を切り離し、X+211頃に衛星フェアリングを分離。X+296頃にメインエンジンが停止され、その後すぐ第1段・第2段分離、第2段エンジンの燃焼を行った後、X+1002(打上げ16分42秒後)頃に「だいち3号」が分離されます。なお、今回は第2段を制御落下させるため、衛星分離後に第2段エンジンを再度燃焼させます。

カウントダウンシーケンス
Credit:JAXA
テーブル

中程度の精度で自動的に生成された説明
リフトオフ後のイベント
Credit:JAXA

記者会見において、岡田氏は「最後の一瞬まで気を抜かずに頑張る」と意気込みを述べました。2014年以来、2年の延期を経て、およそ9年の歳月をかけて開発されたH3ロケット。その記念すべき旅立ちをぜひ見届けましょう。当日はJAXAによる公式ライブ中継がありますので、ぜひご覧ください。(中継はこちら。JAXA公式YouTubeチャンネルへリンクします)

※1 NASDA「H-IIAロケット試験機1号機の打上げ延期について」

https://www.jaxa.jp/press/nasda/2001/h2af1_010822_j.html

※2 遠藤守「H-II・1F飛行試験結果」

http://id.nii.ac.jp/1696/00043548/

※3 JAXA「イプシロンロケット試験機による惑星分光観測衛星(SPRINT-A)の打上げ延期および打上げ予定時間帯の変更について」

https://www.jaxa.jp/press/2013/08/20130808_epsilon_j.html

※4 JAXA「イプシロンロケット試験機打上げ中止の原因究明状況について」

https://www.jaxa.jp/press/2013/09/20130904_epsilon_j.html

※5 JAXA宇宙輸送技術部門「H-IIBロケット」

https://www.rocket.jaxa.jp/rocket/h2b/