宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2023年3月31日、同年5月に予定していたH2Aロケット47号機の打上げについて、H3ロケット試験機1号機の打上げ失敗の調査が進行中であることから47号機の打上げ準備作業に入ることが困難であるとし、同年8月以降に延期すると発表しました。JAXAによると、H2AロケットにはH3ロケットと同系のエンジンが搭載されており、技術的な影響評価を行ったうえで打上げを実施するということです。
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打上げ延期の詳細
今回延期が発表されたH2Aロケット47号機は同年5月、JAXAのX線分光撮像衛星「X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission (XRISM)」と、小型月着陸実証機「Smart Lander for Investigating Moon (SLIM)」を搭載して南種子町の種子島宇宙センターから打上げられる予定でした。
しかし、JAXAは先月のH3ロケット試験機1号機の打上げ失敗を受け調査を進める中で、第2段エンジンの電気系統において過剰に電流が発生したことが原因と推定。H2AロケットとH3ロケットは同系のエンジンが搭載されており、技術的な影響評価を行う必要があるという理由からH2Aロケットの打上げ延期を余儀なくされました。
また、H2Aロケット47号機に搭載するSLIM着陸実証機は、月・太陽・地球の位置関係により月へ向かう軌道に投入できる期間が限られていることから、JAXAは8月以降の月軌道投入可能期間に合わせて打上げを実施する計画です。
47号機に搭載される「XRISM」と「SLIM」
H2Aロケット47号機は「XRISM」と「SLIM」を打上げ、XRISMを地球低軌道へ、SLIMを月周回遷移軌道へそれぞれ投入することを目的としています。
「XRISM」は、2016年の打上げ後わずか数週間で故障した日本のX線天文衛星「Astro-H」の代替機で、米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)をはじめとした関係機関とともに開発が進められています。「XRISM」は、X線観測の高感度・高分解能を実現する先端的な観測機器を搭載し、宇宙の高エネルギー現象の解明に貢献することが期待されています。
「SLIM」は、JAXAが開発した小型の月面着陸実証機で、月面着陸技術の実証を目的としています。この実証機は月面に安全に着陸し、着陸場所の選定や精密な制御を行うことができます。さらに、着陸後には月面の表面を移動し、月面の地形や環境を調査する予定です。「SLIM」の実証結果は、今後の月探査計画「アルテミス」においても利用されるということです。