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H3ロケット試験機1号機、第2段エンジン着火せず打上げ失敗

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2023年3月7日、同日午前10時37分55秒(日本標準時)に、先進光学衛星「だいち3号(ALOS-3)」を搭載したH3ロケット試験機1号機を種子島宇宙センターから打上げましたが、第2段エンジンが着火しなかったことにより、所定の軌道に投入できる見込みがないことから10時51分50秒にロケットに指令破壊信号を送出し、打上げに失敗したと発表しました。

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Credit: JAXA

打上げ失敗の詳細

JAXAは同日午後、記者会見を開き報道関係者らにH3ロケット試験機1号機の打上げ失敗について詳細を説明しました。

JAXAによると、H3ロケット試験機1号機は予定通り、3月7日午前10時37分55秒に種子島宇宙センターから打上げられました。リフトオフ後、固体補助ロケット「SRB-3」は燃焼終了し正常に分離(X+116秒)。それ以降の衛星フェアリング分離(X+212秒)、第1段エンジン「LE-9」の燃焼停止(X+296秒)、第1段と第2段の分離(X+304秒)もほぼ計画通りに進み、所定の飛行性能を発揮していました。しかしその後、第2段のフェーズに突入したところで問題が発生。第2段エンジンの第1回推力立ち上がり(X+316秒)が確認できず、JAXAは、飛行を続けるもH3ロケットに搭載していた地球観測衛星「だいち3号」を予定の軌道へ投入できる見込みがないと判断し、地上から指令破壊信号を送出(X+835秒)しました。計画では、「だいち3号」は打上げから約17分後に軌道に投入するはずでした。

JAXAは今回の事態を受け、理事長を務める山川宏氏をはじめとした対策本部を設置し、原因調査を開始。なぜ第2エンジンに着火しなかったのかについては詳しい原因究明が急がれていますが、原因はエンジン側だけでなく第2段機体の電気系統の異常も含めた複数の可能性を考えなくてはならないということです。

指令破壊後の機体は、第1段の落下区域内(フィリピンの東方沖海上)に落下したと推定されており、現時点での情報によれば、人的被害および第三者損害は確認されていないということです。

Credit: JAXA

2段目のエンジンは「H2A/H2B」の改良型

H3ロケットに搭載されている第2段エンジン「LE-5B-3」は、H2AロケットやH2Bロケットに搭載されていた第2段エンジン「LE-5B-2」をベースに長燃焼秒時化を図って開発されたものです。JAXAによると、電気的なイグナイターで酸素と水素を燃焼させて着火する仕組み自体はH2A/H2Bと同じであるものの、電気的なネットワークは改良を加えているとのこと。

JAXAは、第2段エンジン「LE-5B-3」の地上での燃焼試験で不具合はなかったと説明しており、飛行中のデータなどを詳しく分析し解明を進めています。

今後の展望

搭載されていた先進光学衛星「だいち3号」については、再開発の要否を含めて関係省庁や民間企業と協議しながら進めていく必要があるとしています。また、試験機2号機で打上げが予定されていた「だいち4号」についても、ロケット側の失敗の要因分析を踏まえたうえで、今後の打上げスケジュールを検討する考えです。

H3ロケット試験機1号機は同年2月17日にも打上げ直前に中止するトラブルに見舞われており、調査の結果、電気的ノイズの影響で第1段の制御システムで誤作動が起きたことが判明。今回はノイズを抑える対策を完了させたうえでの再挑戦となる打上げでした。

記者会見でJAXA理事長の山川宏氏は「打上げの失敗が続いていることについて非常に重く受け止めている。まずは原因を究明することに専念し、早期に信頼を回復していくことが最優先の課題だと考えている」と話しました。