2023年9月13日(水)、東京ドームホテル(東京都文京区)を会場に開催された総合宇宙イベント「SpaceLINK2023」。
当日は600名あまりが来場し、衛星ビジネスや月面開発、宇宙エンタメといったさまざまなテーマのトークセッションを聴講、来場者同士や展示企業との交流も盛んに行われた。
当日の会場を彩ったのが、さまざまな観点から宇宙ビジネスに取り組む出展企業・団体。本記事では全3回にわたり、会場でブース展示を行った各企業・団体を紹介する。
一般社団法人ABLab
「宇宙ビジネスの実践コミュニティ」として、宇宙関連業界の発展に寄与するコミュニティ運営や宇宙関連企業の事業支援、宇宙関連の情報発信等を行うABLab(エイビーラボ)。
宇宙を志す人や企業が集い、仲間をつくり、学び合い成長し、共に未来をつくるため活動を行う団体だ。
新事業への挑戦、キャリアアップ、仲間づくり、趣味、次世代⼈材の⽀援など、ABLabへ参加する人の⽬的はさまざまだが、宇宙ビジネスの可能性を信じ、それを行動につなげる力をもったメンバーが多様な業界・職種から集っている。
「SpaceLINK2023」では、ツバの部分がロケットの軌跡をモチーフにデザインされた宇宙産業専用キャップ「T+(ティープラス)」や、学生による探査ローバー開発プロジェクトで製作されたローバーなどが展示された。
ABLab代表理事の伊藤真之氏は、宇宙ビジネスに対する熱量は年々増してきていると語るとともに、「企業の新規事業の選択肢の一つとして『宇宙』が本格的に検討されるようになってきた」と宇宙ビジネス拡大の実感を話してくれた。
一般社団法人ABLab ホームページ
https://ablab.space/
株式会社ダイモン
2012年に設立、ロボットクリエイター・中島紳一郎氏が率いる株式会社ダイモン。月面探査車「YAOKI」の開発でご存じの方も多いだろう。
代表の中島氏は以前、地上最高と言われたアウディの四輪駆動システム「quattro」の開発も手がけたエンジニア。究極のモビリティ開発を目指して独立、設立したのが同社だ。
「YAOKI」は、「七転び八起き」を由来としたネーミングで、起伏に飛んだ地形を探査するモビリティとして、8年あまりをかけて開発された。
中島氏は、YAOKIが月面で洞窟探査を行うことも想定している。
将来的に月に人類が居住する際には、太陽光の直射を避けられる場所に住むことが理想的だからだ。
月面には洞窟らしきものの存在もわかっていると言い、そうした場所が人類の居住に適しているかどうかを探査する際に、複雑な地形でも走行できるYAOKIが力を発揮する。
YAOKIは手のひらサイズの探査車だが、月面では衛星コンステレーションのように多数の機体が連動する。開発は多数の企業とともに行われており、中島氏は「本気でオープンイノベーションを進めている」と語る。
月面をいっせいに走り回るYAOKIの姿を見られる日が楽しみだ。
株式会社ダイモン ホームページ
https://dymon.co.jp/
株式会社ElevationSpace
東北大学発の宇宙スタートアップである株式会社ElevationSpace。
人工衛星内で実験や製造等を行うことができる宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」の開発を行っている。
「ELS-R」は、宇宙で研究開発・製造を行い、地球に物資を回収することのできる日本唯一のサービス。
衛星にペイロードを搭載して打ち上げ、軌道上で無人で実験等を実施し、その成果は大気圏に再突入させて回収する。東北大学吉田・桒原研究室がもつ人工衛星開発・運用実績ノウハウと、大気圏再突入技術を組み合わせることで、宇宙という環境を利用した技術実証や高品質材料製造、エンタメ等をより身近に行えるサービスだ。
SpaceLINK2023では、トークセッション「わたし×宇宙ベンチャー」に同社COOの宮丸和成氏が登壇。宇宙ベンチャー運営のリアルを語った。
また、会場には同社代表取締役CEOの小林稜平氏も訪れ、来場者にサービスの紹介を行うなど交流を図った。
従来では多額の費用がかかっていた宇宙空間利用を手軽に、身近なものにする同社サービスには多くの来場者が関心を寄せており、展示期間中、同社ブースで説明に聞き入る参加者も多く見られた。
株式会社ElevationSpace ホームページ
https://elevation-space.com/
株式会社ストラタシス・ジャパン
ものづくりの世界に大きなイノベーションをもたらしている技術の一つ、3Dプリンティング。
現在では「FDM(熱溶解積層)方式」と呼ばれる技術を発明したS・スコット・クランプ氏が創業したのがストラタシス社だ。
同社の日本法人であるストラタシス・ジャパンもSpaceLINK2023にブース出展、宇宙機などに用いられるパーツなどの展示を行った。
3Dプリンタは、設計図さえあればすぐに形をつくることができるため、試作品の製作などに向いている。従来、パーツをつくるためには金型などが必要だったが、それが不要となったことで開発や試作のスピードアップにもつながる。
現在では自動車製造の現場などでもよく使用されるようになった3Dプリンタだが、日本では宇宙用途で使われることはまだ多くないようで、今後の拡大が期待されるところだ。
さらに、宇宙用途のパーツを3Dプリンティングする際には、使用する樹脂も特殊なものが必要だという。
同社が今回展示した製品は、宇宙空間でガスを放出しにくい「アウトガス性」や、粘り強さを表す「靭性(じんせい)」、また静電気を逃がす性質である「静電気散逸性」などをもった樹脂で製作されている。
株式会社ストラタシス・ジャパン ホームページ
https://www.stratasys.co.jp/