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グローバルな視点で宇宙ビジネスを語る ―SPACETIDE2023レポート

2023年7月4日〜6日の3日間にわたって、東京・港区の虎ノ門ヒルズを会場に行われた『SPACETIDE2023』。

20カ国から約90名が登壇、参加者は過去最多となる1,200名となった。国内外で盛り上がる宇宙ビジネスの潮流を反映して盛会となった本イベントについて、編集部が注目した2つのセッションを紹介する。

パネルディスカッション「今後10年間の日本の国家宇宙戦略」

左から、初日のパネルディスカッションに登壇した慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の白坂成功氏、内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 審議官の坂口昭一郎氏、宇宙飛行士でSpace Port Japan代表理事の山崎直子氏と一般社団法人SPACETIDE代表理事 兼 CEOの石田真康氏

初日に行われたパネルディスカッション「今後10年間の日本の国家宇宙戦略」には、パネリストとして国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事長の山川宏氏、宇宙飛行士でSpace Port Japan代表理事の山崎直子氏、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の白坂成功氏と内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 審議官の坂口昭一郎氏が登壇。一般社団法人SPACETIDE代表理事 兼 CEOの石田真康氏がモデレーターを務めた。

今年6月に改訂された「宇宙基本計画」(参考記事)について、山川氏は「かなり高い透明性をもって策定された」と評価。JAXAへの期待も増しているという認識を示しながら、宇宙人材育成の必要を指摘した。

白坂氏も、ビジョン・将来像・ゴールの順で構造化され、多くの人にとってわかりやすくなったとし、宇宙ビジネスの「産業エコシステム」構築に向けた手立てが揃ったと語った。

また、今後日本が宇宙領域において国際社会の中で果たすべき役割について、山崎氏は「自立的に宇宙利用をしていくためには自国で宇宙輸送システムを確立することが重要」とし、衛星だけでなく有人輸送のための技術を培っていくことが重要だと述べた。

今後策定・公表される予定の「宇宙技術戦略」に関して、内閣府の坂口氏は「民間企業が取り組みを進める際の俯瞰図になればと思う」とねらいを説明した。
これに対し、白坂氏も技術戦略はトレンドでなく、日本政府が考える“勝ち筋”を示すもの、と語り、ここから企業としてどこに投資するかを考えることも重要だとした。

トークセッション「シスルナ経済圏形成に向けたispaceのこれまでの10年とこれからの10年」

トークセッションに登壇した株式会社ispace Founder&CEOの袴田武史氏(右)とSPACETIDE代表理事 兼 CEOの石田真康氏(左)
Credit: SPACETIDE foundation YouTube

4日の夜に行われたトークセッション「シスルナ経済圏形成に向けたispaceのこれまでの10年とこれからの10年」では、4月の月面着陸挑戦で注目を集めた株式会社ispace Founder&CEOの袴田武史氏をゲストに、SPACETIDE代表理事 兼 CEOの石田真康氏が聞き手となってトークセッションが行われた。
途中からはispace CTO(最高技術責任者)の氏家亮氏も参加し、惜しくも着陸には至らなかったミッション1の振り返りを行った。

4月26日に月面着陸への挑戦が行われた今回のミッションについて、袴田氏は「宇宙空間では思っても見なかったことが起こるが、こうした経験が次のミッション2、3に生かされていく」と振り返った。

また、今回の経験を通じ、「組織としては自信がついた、『チーム』になった」と総括した。

続いて、ispaceの創業からこれまでの軌跡について、石田氏は、自身が感じる同社4つのターニングポイントとして、「Google主催のX prizeへの参加」「ispaceへの社名変更」「資金調達の実施」「NASAのプログラムCLPSへの採用」を挙げると、袴田氏自身もこれらのエピソードが自社の事業上、重要なイベントだったと答えた。

そのうえで、「当時から宇宙が商業空間になるという思いはあったが、なぜ月を目指すのかということを社会的な観点で言語化できていなかった。当初はビジョンと言えるはっきりしたものがなかったが、絶対善、誰もがいいねと言えるものが必要だと思うようになり、地球の持続性を高めるために人類が宇宙に住む、外から地球を支える、という考えに至った」と思いを語った。

最後に袴田氏は今後について、ミッション1で得た知見をミッション2・3に引き継いでいくと思いを語るとともに、2030年に向けてビジョンを可視化し、グローバルを牽引する企業として走り抜けていきたいと締めくくった。

3日間開催された本イベントでは、このほかにも関心が高まる宇宙と安全保障の問題、衛星コンステレーションを活用した通信ビジネス、さらに宇宙ビジネスとダイバーシティといった最先端のテーマについて講演やディスカッションが行われた。

主催のSPACETIDEでは、本イベント以外にも、宇宙ビジネス全体を概観できるレポート「COMPASS」の発刊や宇宙ベンチャーのアクセラレーションプログラムなどにも取り組んでいる。
宇宙ビジネスに取り組むビジネスパーソンは今後もSPACETIDEの発信に要注目だ。

一般社団法人SPACETIDE公式サイト
https://spacetide.jp/

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