宇宙ビジネスへの関心が高まり、宇宙ビジネスをテーマにしたカンファレンスイベントが増えている。「宇宙への架け橋を ~誰もが宇宙に挑戦する時代へ~」をビジョンに掲げて昨年9月に設立された学生団体未来宇宙産業フォーラム(FSIF)は、2024年9月28日(土)〜29日(日)の2日間、「宇宙ビジネスシンポジウム2024」を開催する。学生の視点から宇宙産業・宇宙ビジネスの講演イベントを企画した背景や思いを聞いた。
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学生の視点から宇宙産業・宇宙ビジネスを考える団体を発足
― 人工衛星やロケットの開発・製作に取り組む学生団体は増えていますが、宇宙ビジネスをテーマにした学生団体はまだ珍しいと思います。未来宇宙産業フォーラム(以下FSIF)設立の経緯を教えてください。
眞鍋 FSIFは、さまざまな産業の宇宙ビジネス進出に、学生の視点でアプローチすることを目的として昨年の9月10日に設立した学生団体です。
宇宙産業はトッププレイヤーと学生の距離が近い産業だと思いますが、学生はものづくりに取り組むのがメインでした。でも、トッププレイヤーと近いからこそ、ビジネスに関しても学生ができることがある、やっていくべきなのではないかと考えたことが、FSIF設立のきっかけです。
私自身は、高校1年生の頃、「はやぶさ2」のサンプルリターンを見て宇宙に興味をもち、宇宙エレベーターの研究をしたく神奈川大学に入学しました。また、将来的には起業したいと考えているのでビジネスにも関心があり、両方の接点である宇宙ビジネスに興味をもって活動しています。
― 副代表の依田さんも設立メンバーのお一人ですね。
依田 はい。私は大学で応用物理を学んでいますが、大学のサークルでハイブリッドロケットの製作に取り組む中で宇宙ビジネスに興味をもちました。
開発歴の浅いサークルでロケット製作のための資金集めをしていて、資金調達の重要性を痛感したんです。どうお金を集めるか、私たちの技術や知識をどう活かせるのか…と宇宙産業や宇宙ビジネスなどを調べ始めて、興味をもちました。
― 広報担当の橋本さんは文系学部の所属ですが、なぜ宇宙ビジネスに関心をもったのですか。
橋本 子どもの頃から宇宙は好きで、幼稚園くらいから「ロケットを作る人になる」、と言っていた記憶があります。中学生の頃にはJAXAで職場体験をしたりして宇宙領域で働くことを目指していたのですが、なかなかハードルが高く、最近まで諦めていたんです。でも、この5月に依田さんに会ってFSIFの活動を知り、文系でもできることはあるんじゃないかと思い、参加しました。
眞鍋 現在、FSIFには19人のメンバーがいますが、宇宙を専門に学んでいるメンバーは少数派で、他の分野に興味がありつつ、宇宙にも興味があるという人が多いです。
また、関東だけでなく、静岡や愛知、大阪、京都、山梨にもメンバーがいます。
橋本 文系のメンバーはまだ少ないので、もっと増えてくれるといいなと思っています。
急速な成長・日本を変えるポテンシャルが宇宙ビジネスの魅力
― どんなところが宇宙ビジネスの魅力だと思いますか?
眞鍋 今、世界の宇宙産業の規模が54兆円ほどと言われていますが、それが2040年代には約150兆円まで増えるとされています。成長途中ではあるものの短期間にここまで規模が拡大する産業はなかなかないですし、そこが一番の魅力かな。
例えば、宇宙旅行が一般化した場合、インフラなどを含めてさまざまなものを宇宙にもっていく必要があります。全ての産業が宇宙進出のチャンスがあるし、かかわっていかなければいけない領域だとも思います。
依田 日本では賃金が上がらないなど、いろいろな問題がありますが、宇宙産業のような成長産業や、その中で生まれるだろう技術革新などをちゃんと日本の中で活用したり、自国の中で大きくできれば、それは日本の活性化や経済成長のためのゲームチェンジャーになりうると思っています。そういう点からも、取り組んでいく必要がある産業だと思っています。
橋本 2人が話してくれたことに加えて、宇宙というキーワード自体に夢を感じます。未知のことにチャレンジできるのが一番の魅力ですし、宇宙産業は日本では発展途上なので、誰もがリーダーになるチャンスがある点も魅力です。これからの日本を引っ張っていく若手が挑戦すべき領域なんじゃないかなと考えています。
宇宙初心者から宇宙ビジネス関係者までを巻き込むシンポジウムを初開催
― 今回企画された「宇宙ビジネスシンポジウム2024」のコンセプトやおすすめのプログラムを教えてください。
依田 すでに宇宙産業にかかわっている企業の方などはもちろん、宇宙産業への参入に興味のある方、宇宙産業を詳しく知らない方まで幅広く、他産業からどう宇宙にアプローチしていくかを知っていただく場にしたいと考えています。
宇宙産業初心者の方や、宇宙産業を知り直したいという方には、宇宙産業全体の動向をご紹介する初日の「なぜ宇宙が話題なのか」と、2日目の最後の講演がおすすめです。
この他に、「宇宙港が変える地方」というプログラムもあり、これはオリジナリティある切り口かなと思っています。
― それぞれの「推しプログラム」はありますか?
眞鍋 私はロケット開発のサークルもやっているので、2日目の「スタートアップに引きを取らない学生のロケット開発」ですね。
依田 私は自分が担当したプログラム「『きぼう』から民間宇宙ステーションへ」です。現在の国際宇宙ステーション(ISS)に携わっている有人宇宙システム(JAMSS)社や、民間宇宙ステーションを構想しているDigitalBlast社、三菱商事社に登壇いただきます。第一線の企業に登壇いただくので、有意義な情報が提供できると思っています。
橋本 個人的には「旅行先は“宇宙”。宇宙への旅拡大中」が楽しみです。宇宙旅行はイメージが湧きやすいというか、気軽に聞けるプログラムだと思います。
私自身は、宇宙ベンチャー・宇宙開発関連企業のパネルディスカッション「日本の宇宙戦略 ~民間企業の展望と挑戦」の企画を担当しました。宇宙産業の最先端にいる人々が考えていること、やろうとしていることがわかるはずです。
イベントを通じ、宇宙ビジネスを「自分ごと」に
― 最後に、シンポジウム開催に向けた意気込みを聞かせてください。
橋本 学生だけでなく、若手の社会人や今後宇宙産業で何かしたいという人に幅広く来てほしいです。
さまざまな登壇者に、熱をもって宇宙産業を語っていただくので、来場者の皆さんにはぜひ、自分だったら宇宙でこういうことをしたい、叶えてみたいということを、あらかじめ思い描いて参加していただけたらと考えています。
このシンポジウムが、参加者の方の人生を変える瞬間になったら最高だと思っています。
眞鍋 今回のシンポジウムは宇宙産業やビジネスを知っていただく機会ですが、今後も宇宙ビジネスを「自分ごと」にするためのイベントなどを準備していく予定です。次につなげていくステップとして参加いただけたら嬉しいです。
― 多様な人との接点となるシンポジウムで、新しいことが生まれるといいですね。ありがとうございました。
9月28日(土)〜29日(日)開催の「宇宙ビジネスシンポジウム2024」についての詳細はこちら