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日本とルクセンブルクの宇宙分野での協力深まる【ルクセンブルク宇宙機関CEOインタビュー】

「ルクセンブルク・日本ビジネスフォーラム」で行われたJAXAとルクセンブルク宇宙機関の間の覚書への署名の様子

2024年6月13日、東京都港区のホテルオークラ東京を会場に、「ルクセンブルク・日本ビジネスフォーラム」が開催され、データビジネスおよび宇宙産業についての分科会が開催された。
このフォーラムは招待制で行われ、日本企業は54社、ビジネスフォーラムには140名あまりが来場した。

ルクセンブルク大公国(以下、ルクセンブルク。関連記事)は、欧州の中心に位置する、人口67万人弱の国。

規模は小さいながら、EUで最も国際的な、かつビジネス志向の国として知られており、日本の大手企業・金融機関が欧州事業を展開しているほか、日本の宇宙ベンチャーであるispaceはルクセンブルクでローバー開発を行っている。また、昨今ではルクセンブルクのテクノロジースタートアップの日本市場進出も増えているという。

今回は、日本をアジアにおける重要な経済的パートナーと位置づける同国がギヨーム皇太子殿下を団長とする経済使節団を派遣、日本の経済・宇宙関係者と交流を図るなどした。

また、13日のビジネスフォーラムのオープニングでは、JAXAとルクセンブルク宇宙機関(LSA)が、宇宙探査、スーパーコンピューティング、施設の相互利用、商業化の分野における協力等に関する「宇宙航空研究開発機構とルクセンブルク宇宙機関との間の平和目的のための宇宙活動分野における協力覚書」に署名を行った(参考記事)。

「宇宙ビジネスは企業の主体性がカギ」ルクセンブルク宇宙機関CEOマーク・ゼレス氏インタビュー

SPACE Mediaでは、今回のルクセンブルク訪問団の訪日に際し、ルクセンブルク宇宙機関CEOのマーク・ゼレス(Marc Serres)氏にインタビューを行う機会を得た。日・ルクセンブルクの協力関係と宇宙ビジネスについてのゼレス氏のコメントを紹介する。

ルクセンブルク宇宙機関CEOマーク・ゼレス(Marc Serres)氏

― ルクセンブルクの宇宙産業の強みを教えてください。

ゼレスCEO ルクセンブルクでは、現在約80社の宇宙関連企業が活動しています。

80社と聞くと少なく聞こえるかもしれませんが、ルクセンブルクは非常に小さな国なので、割合からすると、非常に多いといえます。ご存じの方も多いと思いますが、SESという世界的な衛星通信大手企業がルクセンブルクを拠点にしています。

国内の多くの宇宙関連企業はスタートアップで、新しいアクティビティやサービスを開発しています。これらの企業の約半数が、例えば衛星画像を使ったサービス提供などのアプリケーション側で、残りの半数が衛星用コンポーネントや小型衛星そのものを製造するようなインフラ側となっています。

― 今回の訪日は日本との関係強化につながると思いますが、どのような期待がありますか。

ゼレスCEO 今のところ具体的に定められたものはありませんが、JAXAとの協力の枠組みの中で、具体的なプロジェクトをもちたいと考えています。

また、これをきっかけにより多くの関係構築ができればと思っています。これはルクセンブルク宇宙機関だけでなく、企業同士が適切なパートナーを見つける必要もあります。私たちはこれをできる限りサポートしたいと考えていますが、将来的にどの企業と協力していくかについては、今のところ未定です。

― 日本でも現在、宇宙ビジネスに注目が集まっています。今、企業との協力というお話が出ましたが、日本企業に対してどのような期待をおもちですか? 日本の産業は長年製造業に強みをもっていますが、そうした面での期待などはありますか。

ゼレスCEO 私たちの取り組み方はボトムアップアプローチなので、企業の皆さんに「これをしてほしい」と要望することはありません。企業の皆さん自身が、私たちと何をしたいか、考えていただきたいと思います。

実は、メディアの方からこういった質問をよく受けるのですが、宇宙ビジネスの取り組みは完全に企業主体のものだと考えていますので、企業の方に向けた私たちの要望というものはありません。

ルクセンブルクでは通常、企業から私たちに支援が求められます。現状、日本企業がルクセンブルクで、ルクセンブルク企業とビジネスをしたいと考えているかどうかはまだ未知数ですが、交流が進めば、このエコシステムの姿がより見えてくると考えています。

「ビジネスについては企業が決める」、これは本当に重要で、従来の宇宙分野とは異なる点です。これまでは宇宙機関が企業に指示していましたが、今は新しい時代です。企業が自らアイデアと野心をもち、私たちに支援を求めるのです。私たちにはそれをサポートする準備があります。

― 宇宙というフィールドでどのようなビジネスをするかは、それぞれの企業自身が描いていくべきということですね。本日はありがとうございました。

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