合成開口レーダー(SAR)衛星コンステレーションの運用と地球観測データとソリューション提供を手がけるICEYE(フィンランド・ヘルシンキ、最高経営責任者 兼 共同設立者 ラファル・モドルゼフスキ、参考記事)とウクライナ国防省は、2024年7月8日、ウクライナの国家安全保障と国防のために、地球のリモートセンシングにおける協力関係をさらに強化する協力覚書に調印したと発表した。
ICEYEは、2022年8月に、ウクライナ政府にICEYEのSAR衛星画像処理能力を提供する契約をセルヒイ・プリチュラ慈善財団(Serhiy Prytula Charity Foundation)と締結したことを発表しており、この契約の一環として、ICEYEのSAR衛星の1基がウクライナ政府による同地域での使用に指定されている。また、同社は自社のSAR衛星コンステレーションへのアクセスをウクライナ軍に提供しており、今回の協力覚書は、こうした2022年以降の支援に基づくもの。
覚書では、ウクライナの領土に関連して撮影された画像が同国の安全保障と防衛のために使用され、いかなる状況においても敵対的な国や組織と共有されないことをICEYEが保証するとともに、ICEYEとウクライナ国防省が提携してウクライナの宇宙防衛能力を強化し、防衛活動を支援するためにSARの専門知識を提供することについても記載されているという。
ICEYEのCEO 兼 共同設立者のラファル・モドルゼフスキ(Rafal Modrzewski)氏は、今回の協力覚書調印にあたり、次のようにコメントしている。
「ICEYEは、当初よりウクライナ国防省と緊密に協力し、ウクライナの宇宙防衛能力の構築を支援し援助してきました。地球観測の世界的な真実の情報源となることで、地球上の生活を向上させるという当社のビジョンに沿って、客観的で実用的なデータと技術的支援をウクライナに提供する当社の取り組みに誇りを持っています。画期的な新技術の利用は、ウクライナ政府に大きな付加価値を提供し続けるでしょう。高度な先進的な宇宙能力の運用者として、また地理空間情報の供給者として、私たちはウクライナに対する当社のサービスが悪用されることを防ぐ責任があると考えています」
衛星コンステレーションをはじめとした宇宙システムは、民間の商業活動だけでなく、国家安全保障などでも重要な役割を果たす「デュアルユース」という特徴をもっている。
なお、ICEYEの本社があるフィンランドはロシアによるウクライナ侵攻後の2023年にNATO(北大西洋条約機構)に加盟しており、ウクライナ情勢に大きな影響を受けている地域でもある。
宇宙ビジネスにおいては、こうした国際情勢や世界的な潮流も抑えておかなくてはならないといえる。