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アストロスケールのデブリ除去実証衛星が対象の周回観測を実施、衝突回避機能の有効性を実証

Credit: 株式会社アストロスケールホールディングス ホームページ

2024年7月9日、スペースデブリ除去を含む軌道上サービスに取り組む株式会社アストロスケールホールディングス(東京都墨田区、代表取締役社長兼CEO 岡田光信)の子会社で、人工衛星システムの製造・開発・運用を担う株式会社アストロスケール(東京都墨田区、代表取締役社長 加藤英毅)は、今年2月に開始した商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)」のミッションにおいて、観測対象のデブリの一度目の周回観測を実施、その際に行われた自律的なアボートにより、安全運用のための衝突回避機能の有効性を実証したと発表した。

「アボート」とは、クライアント(除去の対象となるデブリ等)に対する衝突を回避するためマヌーバを実施し安全な距離まで待避すること。

今回のADRAS-Jのミッションでは、2009年に打ち上げられたH2ロケットの上段(全長は約11メートル、重量約3トン)をクライアントとしており、4月17日には数百メートルまでの距離に接近することに成功していた(参考記事)。

今回実施された周回観測は、デブリの状態や動きについてより詳細に把握するためのものです。

一定の距離を保ちながら物体の周りを飛行するという、ランデブ・近傍(RPO)運用の中でも非常に高度な技術とされており、ADRAS-Jの周回観測の運用では、位置や姿勢の制御にADRAS-J搭載のLiDARとアルゴリズムを駆使し、観測対象のデブリの周囲を約50メートルの距離を維持して飛行しながらその画像を連続して撮影する。

この周回観察でADRAS-Jはデブリの周囲を安定して飛行しながら撮影を行っていたが、デブリの周囲を1/3程度(約120度)周回したところでデブリとの相対姿勢制御の異常が検知されたため、自律的にアボートし、デブリからいったん待避するかたちとなった。

自律的にアボートを行う機能はADRAS-Jの設計時に組み込まれていたもので、これが行われたことは衝突回避機能の設計が適正であったことを証明するものとなる。同社によると、相対姿勢制御の異常が検知された原因も判明しており、現在は最接近の準備が進められているという。

7月8日から10日まで、東京都港区の虎ノ門ヒルズで開催されている宇宙ビジネスカンファレンス・SPACETIDE 2024でも、軌道上のデブリ対策については大きなトピックとなっている。

ADRAS-Jの実証の今後は世界が注目することになりそうだ。

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