米航空宇宙局(NASA)の月探査ミッション「アルテミス1」にて、宇宙船オリオンに搭載された3体のマネキンが内部から回収されました。船長役の「Campos(カンポス)」をはじめ、「Helga(ヘルガ)」と「Zohar(ゾーハ)」の3体のマネキンは、新宇宙が人体に及ぼす影響や、放射能遮断ベスト「AstroRad」の人体を守る能力を確かめるため、今後詳しく分析されるということです。
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オリオンは2022年11月16日午前(米東部時間)、フロリダ州のケネディ宇宙センターから新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」初号機で打上げられました。今回のミッション「アルテミス1」では、オリオンが地球に帰還する際の高温に耐えられるかどうかや、内部に搭載したマネキンを使って、飛行で発生する加速度・振動・放射能露出量などの調査を実施。予定通り調査を終えたオリオンは同12月11日、カリフォルニア沖の太平洋へと着水し、その後、米海軍の揚陸艦「USSポートランド」によって無事回収されました。
なお、オリオンは 遠方逆行軌道を周回中、地球から43万5,000キロ離れた場所に到達し史上最遠記録を更新しました。
マネキン3体のさらなる分析を実施
同12月30日、ケネディ宇宙センターに到着したオリオンのクルーモジュールは、搭載物の取り出し作業および各部の検査が行われました。
オリオンに搭載されたマネキン「Campos(カンポス)」「Helga(ヘルガ)」「Zohar(ゾーハ)」の3体は、宇宙船の回収後となる2023年1月10日にケネディ宇宙センターにて梱包箱に収納。今後、「Campos」はNASAのジョンソン宇宙センターにて、取り付けられたセンサーや計測器のデータをもとに、飛行で発生する加速度や振動などの分析が予定されています。また「Helga」と「Zohar」は取り付けられた放射能検出器をケネディ宇宙センターで回収した後、ドイツ航空宇宙センター(DLR)へと搬送され、放射能遮断ベスト「AstroRad」の分析が行われるということです。
2024年の有人ミッションに向けて
2024年5月に予定されている有人月飛行ミッション「アルテミス2」では、オリオン宇宙船に4人の宇宙飛行士を乗せて今回と同じ軌道に入ることが予定されており、その際「アルテミス3」で宇宙飛行士が月に降り立つための着陸候補地の調査が行われます。
なお、今回の「アルテミス1」で得られた放射線や加速度の分析結果は、「アルテミス2」や今後のミッションに活用されるということです。