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シンク・ネイチャー、衛星データを活用した生物多様性インパクト評価の実証に採択

Credit: 株式会社シンク・ネイチャー プレスリリース

2023年12月13日、株式会社シンク・ネイチャー(沖縄県中頭郡、代表取締役 久保田康裕)は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)による陸域観測技術衛星2号「だいち2号(ALOS-2)」の観測データ事業化実証プロジェクトのテーマの1つに選定され、「生物多様性へのインパクト評価のための鉱山露天掘り状況の空間可視化」を実施すると発表した。

シンク・ネイチャーは、生物多様性科学分野での研究業績を有する研究者で構成される琉球大学発スタートアップ。生物多様性関連のビッグデータを活用した分析レポーティングサービスなどを提供しており、生物多様性関連のデータ基盤の一部公開なども行っている。

今回、同社は、MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社(東京都中央区、取締役社長 グループCEO 原典之)ならびにMS&ADインターリスク総研株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 一本木真史)と連携したチームとして実証を実施する。

気候変動への対策として、世界的に脱炭素に向けた動きが進んでいるが、生物多様性の保全・回復もまた、排出されたCO2の吸収や固定に大きな役割を果たす要素である。

2030年までに、生物多様性消失に歯止めをかけ、生物多様性を回復の軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」と呼ばれる国際目標があり、最近では、企業に脱炭素だけでなく事業による生物多様性への影響を開示するよう求める動きも進んでいる。

一方で、生物多様性は多面的な要素を包含しているため、その消失や回復を数値的に定量するのが困難でもある。

縦軸は人類の存続基盤としての生物多様性・生態系の状態を示したもの。図中のカーブは、2020年代には生物多様性の損失を食い止め、2030年には回復軌道に乗せることを示している
Credit: 株式会社シンク・ネイチャー プレスリリース

この問題に対し、シンク・ネイチャーは、生物多様性ビッグデータと生態学の理論を基に、さまざまなデータ分析手法を用いて自然保全・再生の定量的な効果量測定を可能にし、30by30(ネイチャーポジティブ達成に向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標)やOECM(保護地以外で生物多様性に資する地域)の実効性強化を提唱してきたという。

同プロジェクトでは、こうしたネイチャー関連のデータテクノロジーを基に、露天掘り鉱山を人工衛星でモニタリングして生物多様性の喪失を高精度で可視化するシステムを開発し、鉱山開発をネイチャーポジティブに向けるアクションプランを探索する。

具体的には、世界的な生物多様性のホットスポットであるインドネシアのニッケル鉱山を対象に、「だいち2号 (ALOS-2)」のPALSAR-Lバンドデータ等を用いて、ニッケル露天掘りの時空間的な開発実態を検出するAIを開発。

PALSAR-Lバンドデータは、可視光データのように色味を対象とするのではなく森林などの多い地域も含む地表面の変化を観測できるため、露天掘りおよびその周辺の森林等地域の変化に対する検出力が高いと期待されているという。

このデータに、シンク・ネイチャーが有する各種のデータ・指標を重ねることで、ニッケル採掘に伴う生物多様性の消失量、野生生物の絶滅リスク、生態系の炭素貯留機能の劣化量を評価する。

脱炭素に伴うEV(電気自動車)化の進行や、スマートフォンなどのデジタルデバイスに用いられるニッケルやリチウムなどのレアメタルは需要が急増しており、特にニッケルの採掘は、生産量の9割弱が露天掘りであるため、自然へのインパクトが大きい。

シンク・ネイチャーのチームでは今後、同プロジェクトを通してニッケルの採掘圧が生物多様性や生態系サービスに与えるインパクトを可視化されることで、脱炭素の取り組みとネイチャーポジティブを両立しうる鉱山開発のあり方を検討する基盤ツールの開発を目指していくとしている。

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