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JAXAがSLIM月面着陸の成果を公表 ピンポイント着陸を達成、画像データも取得

着陸後SLIM搭載航法カメラによる月面画像。重力方向を加味して画像を回転させている
Credit: JAXA

2024年1月25日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、同年1月20日午前0:20(日本標準時)に月面に着陸した小型月着陸実証機(SLIM)が取得した各データの分析結果を公表した。

極めて高い精度でのピンポイント着陸に成功

データ分析の結果、SLIMが当初の目標着地地点から東側に55m程度の位置で月面に到達していることが確認でき、ピンポイント着陸性能を示す障害物回避マヌーバ開始前(高度50m付近)の位置精度としては、10m程度以下、恐らく3~4m程度と評価されたとした。

SLIMの着陸目標地点と、現状の位置の推定
Credit: Chandrayaan-2:ISRO/SLIM:JAXA

これにより、詳細なデータの評価は継続する必要があるものの、SLIMの主ミッションであった100m精度のピンポイント着陸の技術実証は達成できたものと考えられるとしている。

SLIMは1月20日の着陸時、姿勢等が計画通りではなかったために太陽電池による電力発生ができず、同日午前2:57(日本標準時)に地上からのコマンドにより電源をオフにしていた。

しかし、電源がオフにされるまでの間に、今後のピンポイント着陸技術に必要な着陸に至る航法誘導に関する技術データ、降下中および月面での航法カメラ画像データをすべて取得できた。

マルチバンド分光カメラ・小型プローブからの画像取得にも成功

SLIMに搭載されたマルチバンド分光カメラ(MBC)も、電源オフまでの間に試験的に動作し、撮像画像が取得された。

MBCは月面着陸後、打上げおよび着陸の衝撃に耐えるためのロック機構を解除し、可動ミラーを動かして、観測対象となる岩石を特定するためのスキャン運用を実行。

257枚の低解像度モノクロ画像を撮像・合成して、景観画像を作製したのが下記の画像だ。

SLIM搭載マルチバンド分光カメラ(MBC)による月面スキャン撮像モザイク画像(上)とその拡大図(下)。モザイク画像の右側の灰色の部分はスキャン運用を途中で切り上げたためにデータのない部分
Credit: JAXA、立命館大学、会津大学

今後はこの景観画像をもとに観測対象岩石を選別、「ブルドッグ」「しばいぬ」など、相対的な大きさがイメージできるような愛称をつけ、電力が回復した場合は速やかに10バンド高解像度分光観測ができるよう準備を進めているという。

さらに、SLIMは接地直前に小型プローブ(LEV-1・LEV-2)の放出にも成功。LEV-2がSLIMとその周辺環境を撮影し、LEV-1の通信機で画像を地上に転送した。

LEV-2「SORA-Q」が撮影・送信した月面画像。本画像はLEV-1、LEV-2無線局の試験電波データ転送により取得した試験画像
Credit: JAXA/タカラトミー/ソニーグループ株式会社/同志社大学

これによりLEV-1・LEV-2間の通信機能が正常に動作したことが確認できたとともに、LEV-2が収納状態の球体から変形したことから、SLIMからの放出後に正常に月面で展開・駆動したことも確認できた。

さらに、LEV-2が自律制御でオンボードの光学カメラを使って撮影した複数枚の画像の中から、SLIMが画角内に写っている良質な画像を画像処理アルゴリズムにより選定して送信したこともわかった。

走行ログを含めたその他のデータについては現在も解析が行われており、今後その結果を公表予定。

SLIMは現在太陽光発電ができず停止した状態ではあるが、今後の月面への太陽の当たり方によって再起動する可能性も残されている。
ピンポイント着陸の達成やそれに関連するデータの取得、地球への画像送信など多くの成果を挙げたSLIM。日本の月面開発にとって大きな一歩になったと言えるだろう。

JAXAによる会見の模様は下記から視聴できる。

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