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アストロスケールのデブリ除去実証衛星「ADRAS-J」、ターゲットまで数百mの距離に接近

商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」のイメージ画像
Credit: 株式会社アストロスケール プレスリリース

スペースデブリ除去をはじめとした軌道上サービスに取り組む株式会社アストロスケールホールディングス(東京都墨田区、創業者兼 CEO 岡田光信)の子会社で、人工衛星システムの製造・開発・運用を担う株式会社アストロスケール(東京都墨田区、代表取締役社長 加藤英毅)は、2024年4月22日、同社が今年2月に開始した商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)」のミッションにおいて、デブリの後方数百mの距離にまでの接近に成功したと発表した。

同社は今年2月18日、ニュージーランドから商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」を打ち上げ(関連記事)。同月22日から対象のデブリへの接近を開始していた。

位置データの提供や姿勢制御ができないデブリに接近

今回、実証の対象となっているデブリは、2009年に打ち上げられたH2ロケットの上段で、全長は約11メートル、重量は約3トン。こうしたロケット上段や運用を終了した人工衛星などは形状に関する情報が限られており、位置データの提供や姿勢制御などもできないために「非協力物体」と呼ばれる。

2月22日より開始された接近の運用では、GPSと地上からの観測値という絶対的な情報を用いる「絶対航法」と呼ばれる航法で、ADRAS-Jを軌道投入時の軌道からデブリと同じ軌道へと調節し、デブリの後方数百kmにまで接近。

4月9日には、ADRAS-J搭載のVisCam(可視光カメラ)でデブリを捕捉し、衛星搭載センサを駆使してデブリの方角情報を用いる「相対航法」を開始。この方角情報も用いながら相対軌道を制御して距離を詰め、デブリの後方数kmの距離で、衛星に搭載したIRCam(赤外カメラ)でデブリを捕捉した。

そして4月16日、IRCamが取得したデブリの形や姿勢などの情報を用いる相対航法を開始し、翌17日にデブリの後方数百mへの接近に成功した。

今後はさらにデブリに接近し、その状態や動きを把握するための撮影に移るという。

1957年に世界初の人工衛星であるスプートニク1号が打ち上げられて以降、地球近傍を周回する人工衛星は急激に増加し、その役目を終え、デブリとして軌道上に漂う物体も増加の一途にある。

これからも地球周辺の宇宙環境を利用したサービスを提供・享受し続けるためには、デブリの除去をはじめとした軌道上の環境維持が必須となる。

この実証から得られるデータや知見が持続可能な宇宙・軌道の実現に活かされる日が早く訪れることを願いたい。

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