2024年7月17日、小型衛星の開発・製造や地球観測プラットフォームの提供などを手がける株式会社アクセルスペース(東京都中央区、代表取締役 中村友哉)は、2022年に同社が発表したAxelLiner事業発の新サービスとして、宇宙用コンポーネントの軌道上実証に特化した「AxelLiner Laboratory」(AL Lab)を開始すると発表した。
同サービスは今後、本格的な営業活動を開始するが、ASPINA シナノケンシ株式会社(長野県上田市、代表取締役社長 金子行宏)がサービス適用第一号となることも同日発表された。
両社は、2020年から人工衛星の姿勢制御などに使用されるリアクションホイールの共同開発を進めており、これを2026年中に打ち上げ、軌道上実証を実施するという。
アクセルスペースは2022年に顧客のニーズに応じた小型衛星の開発から製造、打上げ、運用までを短期間でワンストップに行う「AxelLiner事業」を開始し、本格的なサービス開始に向けて汎用小型衛星バスの開発や量産に向けた宇宙機製造アライアンスの組成、顧客体験革新のためのソフトウェア・AxelLiner Terminalの構築を進めている。
また、今年3月には、人工衛星量産の鍵となる汎用バスシステムの実証を目的に実証衛星PYXIS(ピクシス)を打上げ、軌道上での運用を行っている(参考記事)。
こうした中で、宇宙用コンポーネントの開発企業やミッション機器の開発企業から同事業に関心が寄せられたことが軌道上実証に特化した今回のサービス検討開始のきっかけになったという。
日本国内では2016年からJAXAによる「革新的衛星技術実証プログラム」が実施されており、定期的な軌道上実証機会を提供されているものの、現状では実施頻度が低く、採択から打上げまでにも時間がかかるため、タイムリーな実証が難しいと同社は指摘。
今年から開始される宇宙戦略基金にも「衛星サプライチェーン構築のための衛星部品・コンポーネントの開発・実証」(経済産業省実施分)が含まれており、今後、軌道上実証サービスに対するニーズがますます増大していくと見て、こうした需要を取り込んでいく構えだ。
「AxelLiner Laboratory」(AL Lab)の特徴は下記の通り。
- アクセルスペースが開発する100kg級小型衛星の顧客機器搭載スペースを分割し、実証機器に割り当て
- AxelLiner Terminalと衛星バスの機能を模擬するエミュレータを提供し、基本的に顧客のみで実証機器の各種試験(アクセルスペース衛星バスとの接続テストを含む)を実施可能
- アクセルスペースの衛星自動運用システムを応用し、実証計画設定や結果取得を容易にする機能をAxelLiner Terminal上で提供予定
- 軌道上実証期間は1年間を予定
- 以下のオプションサービス提供を計画中
- TRL*認証:弊社の衛星オペレータとしての知見を生かし、実証コンポーネントごとにTRL7またはTRL9の軌道上テスト項目を用意。クリアした場合、実際の動作結果とともに証明書を発行。AxelLinerウェブサイト(今後準備)において、証明書を取得したコンポーネントを紹介予定
- TRL9の証明書を取得したコンポーネントについては、将来の弊社小型衛星での活用を検討
- 実証機器の動画・静止画撮影や温度計測など
- 打ち上げ機会の増加に合わせ、開発遅れ等が発生した際に打ち上げ時期を変更
*TRL:Technology Readiness Level(技術成熟度)。特定の技術の成熟度の評価を行い、異なったタイプの技術の成熟度の比較をすることができるシステマティックな定量尺度のこと
また、下記のような企業をサービスの想定顧客に考えているとしている。
- 宇宙用コンポーネントを開発しており、早期に軌道上実証して販売につなげたい企業
- 将来的に自社事業向けに活用を想定したミッション機器のプロトタイプを開発しており、次のフェーズに進む前に軌道上での動作試験を行いたい企業
- 新商品や企業のPRとして、宇宙に何らかの物を持っていきたい企業
- 宇宙空間の特徴を生かしたエンターテインメント関連サービスを提供したい企業
なお、「AxelLiner Laboratory」の開始にあたり、従来のコンセプトに基づくサービスは「AxelLiner Professional」(AL Pro)と定義され、引き続きサービスの本格開始に向けて準備を進めていくとしている。