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アクセルスペース、「AxelLiner」の実証衛星・PYXISを報道陣に公開

2023年12月21日、小型衛星の開発・運用や衛星データ提供等を行う株式会社アクセルスペース(東京都中央区、共同創業者・代表取締役CEO 中村友哉)は、同社が展開する小型衛星ミッションワンストップサービス「AxelLiner」の実証衛星初号機・PYXIS(ピクシス)を報道関係者に向けて公開した。

また、同日にSMBC-GBグロース1号投資事業有限責任組合をリードインベスターとする、約62.4億円の第三者割当増資によるシリーズDラウンドの資金調達を実施したことも発表。
調達した資金は、現状5基で運用している地球観測プラットフォーム「AxelGlobe」の増強に充てる考えを示した。

「使いやすい・早い・安い」衛星ミッションサービスの提供を目指す

発表会の冒頭、アクセルスペース共同創業者・代表取締役CEOの中村友哉氏が同社の事業の最新状況を説明した。

集まった報道陣に向けて話す株式会社アクセルスペース 共同創業者・代表取締役CEOの中村友哉氏

2008年に創業した同社は、2013年に世界初の民間商用超小型衛星として打ち上げられたWINISAT-1以降、9基の小型人工衛星を開発・製造しており、いずれも打上げに成功して自社運用を行っている。

提供サービスとしては光学衛星によるデータを提供する地球観測プラットフォーム「AxelGlobe」事業を2015年に立ち上げ、2022年には小型衛星の開発・製造から運用までをワンストップでサポートする「AxelLiner」事業を発表。

今回公開された実証衛星PYXISは、同社による10基目の衛星となり、AxelLiner事業が目指す人工衛星製造の標準化を実証するという目的がある。

実証衛星PYXIS。PYXISは「らしんばん座」のことであり、今後の方向性を示すという思いが込められている
Credit: 株式会社アクセルスペース提供

通常、100〜300kg級の小型人工衛星はミッション内容に応じオーダーメイドで開発・製造されるため、打上げまでには3〜5年の期間を要すると言われるが、同サービスでは衛星の基本的な動作を担うバス部分を共通化することで、受注から打上げまで1年を目標に提供することを目指している。

中村氏は、AxelLiner事業立ち上げの背景に、近年、小型衛星ミッションの需要が増加していることを挙げた。需要が増える一方で、開発のスピードと効率性を上げるためには標準化が必須だとし、これを実現することで、「使いやすい・早い・安い」小型衛星を提供することを目指していくとした。

実証衛星PYXISで実施する「3つのミッション」

PYXISでは、上述のAxelLiner事業のための「汎用バスシステム」の実証、望遠鏡ミッション、LPWA(低消費電力広域)通信ミッションの3つを実施する予定。

1つ目はAxelLiner事業で求められる汎用衛星システムの技術実証・自動運用システムの実証・宇宙機製造アライアンスの確立が目的。また、2つ目のミッションではAxelGlobeのデータを提供する小型人工衛星GRUSの次世代版に向けたセンサの先行実証のため光学望遠鏡が搭載される。
3つ目のミッションは、ソニーとの共同研究として進められているIoT通信の実証が目的。ソニーの独自規格・ELTRESTMを利用し、地上からのIoT信号を軌道上で受信する。

クリーンルーム内に置かれた実証衛星PYXIS。右上に見える黒い三角錐のような部分でIoT信号を受信する

中村氏の説明に続き、AxelLiner事業本部PYXISユニットリーダーの杉本和矢氏がこれまでの開発・試験状況を説明。

2022年に試作開発を進めて2023年にフライトモデルの開発を進めたPYXISは現在、フライトモデルの最終準備中で、2024年第1四半期の打上げを予定しているとした。

また、PYXISの運用終了後に衛星をデオービット(軌道離脱)させる機構として開発されたD-SAIL(小型衛星用膜面展開型デオービット機構)についても紹介され、同機構は今後、同社の衛星に標準搭載される予定だと語った。

PYXISの開発状況を説明するAxelLiner事業本部PYXISユニットリーダーの杉本和矢氏

また、人工衛星の量産に向け、アクセルスペースではシステム設計、調達、製造、輸送の4側面から、同社を含めた4社での宇宙機製造アライアンスを組んでおり、市場ニーズへの柔軟な対応や、ミッションの全段階におけるサステナビリティ、開発プロセスのDXにも取り組んでいく姿勢が打ち出された。

AxleGlobe事業の強化と小型衛星製造のデファクトスタンダード確立を目指す

杉本氏による解説の後、再び中村氏が登壇して今後のAxelGlobe・AxelLiner、両事業の方向性を説明。AxelGlobeについては、前述の調達資金を活用して衛星数を増やして全世界・1日1回の撮影頻度を目指すとしたほか、より高解像度の画像の提供なども視野に入れているとした。

また、AxelLinerについては小型衛星製造のデファクトスタンダードとなることを目指したいと語り、増加する小型人工衛星へのニーズに対応するとともにプロジェクトライフサイクル全体を見据えたサステナビリティにも取り組んでいきたいとした。

中村氏と杉本氏のプレゼンテーションの後に行われた質疑応答では、時間いっぱいまで報道陣からの質問が続き、同社の事業に対する関心の高さがうかがわれた。

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