2024年8月13日、スペースデブリ(宇宙ごみ)除去等の軌道上サービスに取り組む株式会社アストロスケールホールディングス(東京都墨田区、代表取締役社長兼CEO 岡田光信)の英国子会社、Astroscale Ltd(アストロスケール英国)は、航空機製造大手Airbus SEの子会社であるAirbus Defence and Space(エアバス)との間で、軌道上サービスとデブリ除去における協業の可能性に関する覚書を締結したと発表した。
アストロスケール英国とエアバスでは、このパートナーシップを通して両社の強みと技術を共有し、持続可能な宇宙環境の実現や衛星の運用可能年数の延長の課題解決を目指しながら、特に英国における軌道上サービス産業の発展と宇宙の循環型宇宙経済の確立を目指すとしている。
今回締結された覚書では、主な協業分野として「デブリ除去」「軌道上サービス」「軌道上のランデブ・近傍運用」「軌道上での組み立てと製造」「衛星の燃料補給と寿命延長」の5項目が記載されている。
各項目の内容は下記の通り。
デブリ除去:地球の軌道上のデブリを確認、捕獲、除去するための画期的な方法の可能性の模索。現在運用中、あるいは将来運用予定の宇宙機の安全を守り、持続可能な宇宙環境を保つために必要な技術であり、アストロスケールの今後のミッションでエアバスのロボットアーム「ビスパ」を取り入れる可能性を継続して模索。
軌道上サービス:軌道上にある衛星に対してメンテナンス、修理、および改修を行うための技術とソリューションの開発。この技術の発展により、衛星の運用可能年数を延ばし、デブリとなる衛星の数を減らすことで宇宙の運用効率を上げることが可能。
軌道上のランデブ・近傍運用(Rendezvous and Proximity Operations:RPO):衛星を安全に捕獲するための技術開発。軌道上サービスとデブリ除去に必要な正確なナビゲーションと捕獲技術の開発を含む。
軌道上での組み立てと製造:宇宙空間で宇宙機の部品を組み立てる新たな可能性の模索。このアプローチは資源を再利用することでごみを削減し宇宙ミッションのコストを低減することを可能にし、循環型宇宙経済の実現をサポートする。
衛星の燃料補給と寿命延長:軌道上での燃料補給や他のサービスを通した、既存の衛星の運用と寿命延長の実現。これにより代用の人工衛星の打ち上げの必要性を低減する。
2023年、デブリ除去の実証衛星である「ADRAS-J」の打上げを控えたアストロスケールがメディア向けに開催したセミナーで、岡田光信CEOは、デブリ除去の技術を実証することで「宇宙のロードサービス」を確立すると語っていた(参考記事)。
デブリの存在は昨今ますます深刻な課題として認識されており、「宇宙の持続可能性(スペース・サステナビリティ)」といった言葉とともにデブリ対策の確立が急がれている現状がある。今回、衛星開発に豊富な経験をもつエアバスとの協業可能性の検討が開始されたことで、アストロスケールにとって、軌道上サービスの事業化に向けた動きが一歩進んだといえるだろう。