小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行う福岡発宇宙ベンチャーの株式会社QPS研究所(福岡市中央区、代表取締役社長CEO 大西俊輔)は2023年7月25日、小型SAR衛星QPS-SAR 6号機「アマテル3」による分解能46cmの画像取得に成功したと発表した。
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同社は、従来のSAR衛星の20分の1の質量、100分の1のコストとなる高精細小型SAR衛星「QPS-SAR」を開発する企業。夜間や天候不良時でも任意の対象を高分解能・高画質で観測できるSAR画像を提供している。
同社は2025年以降に、小型レーダー衛星36機による約10分間隔の準リアルタイム観測データ提供サービスの開始を目指しており、現在は1号機「イザナギ」と2号機「イザナミ」、6号機「アマテル3」の3機を運用中だ。
アマテル3はイザナミと比べて、太陽電池パネル、バッテリーを追加し、衛星からのダウンリンク量の大幅な圧縮を可能とする「軌道上画像化装置」を搭載するなどの改良が加えられている。
「アマテル3」は、米SpaceX社のロケット「Falcon 9」で2023年6月13日午前6時35分(日本時間)に打上げられ、79分後に高度約540km で軌道投入された。
同日の午前9時30分頃には、初交信に成功し、打上げから約21時間後に収納型アンテナを展開。その後、初画像取得に向けた衛星機器の微調整を続け、打上げから1カ月後の同年7月13日に、通常モード(ストリップマップモード)での初画像(ファーストライト)を公開した。
そして今回、民間のSAR衛星では日本最高の分解能となる高精細モード(スポットライトモード)でのアジマス(衛星の進行方向)分解能46cm、レンジ(衛星のマイクロ波を照射する方向、もしくは衛星の進行と直交する方向)分解能39cmの画像取得の発表に至った。
公開されたのは、神奈川県横浜市、米国のネバダ州ラスベガスとハワイ州オアフ島の画像。
「アマテル3」による分解能46cmの画像取得に成功したことについて、QPS研究所代表取締役CEOの大西俊輔氏は「2号機から分解能を向上させ、かつ、デリケートな姿勢制御が必要となる高精細モードの画像取得をこの短い期間で行えたことは、1機のサービス開始までにかかる初期運用期間を短縮できたということになり、SAR衛星コンステレーション構築という私たちの計画において、非常に重要なポイントだ。私たちが目指す世界を実現するために、“高分解能”の次は、“高頻度”に向けて歩みを加速していく」とコメントした。
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