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12/27宇宙ニュース・JAXA、小型月着陸実証機SLIMプロジェクトを総括 ほか3件

JAXA、小型月着陸実証機SLIMプロジェクトを総括

Credit: JAXA 記者説明会説明資料

2024年12月26日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は「小型月着陸実証機(SLIM)プロジェクトの総括に係る記者説明会」を開催し、JAXA理事で宇宙科学研究所所長の國中均氏と、宇宙科学研究所 SLIMプロジェクトチーム プロジェクトマネージャで宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系教授の坂井真一郎氏が、SLIMプロジェクトの結果やこれまでに得られた成果などを報告した。

月への高精度着陸技術の実証と、軽量な月惑星探査機システムの実現による月惑星探査の高頻度化への貢献を目的としたSLIMプロジェクトは2016年から開始。2023年9月7日に打ち上げられ、同年12月25日に月周回軌道に到達、今年1月20日に月面への軟着陸を達成した。

目的の一つである高精度着陸(ピンポイント着陸)に関しては、着陸直前で推進系にトラブルが発生したものの、着陸地点評価で約55mの精度を達成。従来は数〜10数kmだった月着陸の精度を大きく上回った。

また、軽量化に関しても、電源系や通信系、着陸脚などさまざまな観点で要素技術の開発を進めたことで、燃料を除く質量が約200kg(燃料込み約715kg)と、民間企業を含めこれまで月面着陸に挑んだ各国の月着陸機6機の中で最軽量を達成したとみられるとした。

一方で、SLIMは着陸時に推進系に異常が発生し、90度傾いた状態で軟着陸した。

これについては、エンジン自体に問題があったのではなく、軽量化のために採用された推進系システム(ブローダウン方式)の動作の結果起きたものと結論づけたと説明された。
大まかな流れとしては、メインエンジンと補助スラスタの噴射タイミングが重なったことで圧が低下し、不着火の推薬が残留。その後、スラスタの噴射が終わって圧が回復したところで燃え残った推薬が異常燃焼して大きな衝撃が発生しスラスタが破損、ノズル離脱に至ったと考えられるという。

Credit: JAXA 記者説明会説明資料

SLIMは着陸後、想定されていなかった越夜にも3回成功。8月23日に運用を終了し、プロジェクト自体も現在解散の手続きが進められているというが、SLIMにはNASAから提供されたリフレクター(Laser Retroreflector Array:LRA)が搭載されており、NASAの月周回機LRO(Lunar Reconnaissance Orbiter)からのレーザ測距に成功している。NASAは今後も継続的に測距を試みるとのことで、SLIMは今後も月面上の測距の標的・基準点になり続けるという。

記者説明会の様子は、下記のJAXA YouTubeチャンネルで視聴できる。

ispace欧州法人、月面への「レーザー反射鏡」輸送でイタリア宇宙機関と契約締結

手のひらサイズのドーム型LaRA2
Credit: 株式会社ispace プレスリリース

2024年12月26日、株式会社ispace(東京都中央区、代表取締役 袴田武史)は、同社の欧州法人ispace EUROPE S.A. とイイタリア宇宙機関(Agenzia Spaziale Italiana:ASI)が、月面で正確な位置測定を可能とするレーザー反射鏡(LaRA2)の輸送に関するペイロードサービス契約を締結したと発表した。

LaRA2は、小型・軽量の反射鏡機器で、電源がなくても月の過酷な環境下で長期間にわたり機能する。入射角に関係なくレーザービームが直接光源に反射するよう設計されており、同様の反射鏡は、現在、火星探査を行っているアメリカ航空宇宙局(NASA)の無人探査機・パーサヴィアランスにも搭載されているという。

この反射鏡は、ispaceの米国法人・ispace technologies U.S. が2026年に予定しているミッション3の一環として月の南極付近に着陸させる月着陸船「APEX 1.0」に搭載される予定。月面着陸後、ASIは月周回衛星を使ってLaRA2のレーザー測距観測を長期的に実施し、その測定値を過去のアポロ計画で月面に配置された他の反射鏡の測定値と組み合わせることで、月のマッピングや月面の位置特定のためのナビゲーション改善に役立つデータの収集ができることを期待しているという。

アストロスケールの英国子会社ほか2社、軌道上での宇宙ごみ除去などに向けた規制策定の資金を獲得

Credit: 株式会社アストロスケールホールディングス ウェブサイト

2024年12月23日、スペースデブリ(宇宙ごみ)除去等の軌道上サービスに取り組む株式会社アストロスケールホールディングス(東京都墨田区、代表取締役社長兼CEO 岡田光信)の英国子会社、Astroscale Ltd(Astroscale UK、参考記事)は、イタリアのD-Orbit、スイスのClearSpaceとともに、イギリスの科学技術イノベーション省から、ランデブー・近傍運用(RPO)の規制策定に向けて約69万ポンド(約1億4,000万円)の資金を獲得したと発表した。

「ランデブー・近傍運用」とは、宇宙空間で2つの物体の相対位置や相対速度等を意図した範囲に制御しながら接近(ランデブー)させ、双方の物体が結合、またはきわめて近い状態で行う運用(近傍運用)のこと。宇宙空間に漂うデブリに接近しての回収・軌道離脱や、燃料が少なくなった人工衛星への補給といったことが想定されている。

今回、同社らが獲得した資金は、規制策定に向けた第一段階の作業に充てられ、デブリ除去や軌道上での燃料補給、その他のRPOミッションにおける規制・許認可に関する推奨事項を報告書として取りまとめる予定。

AI・ディープラーニング技術のリッジアイ、林野庁の公募に採択 衛星データでの山地災害把握を実証

2024年12月26日、株式会社Ridge-i(東京都千代田区、代表取締役社長 柳原尚史)は、林野庁の公募「地球観測衛星データを活用した山地災害判読事業」に採択されたことを発表した。

同社はこの事業で地球観測衛星データをもとに山地災害の迅速かつ高精度な解析を実現するために、(1)ALOS-2(だいち2号)/ALOS-4(だいち4号)を用いた解析・判読方法の検証と(2)ALOS-4の特徴を活かした利活用検証の2つの取り組みを行う。

(1)では、独自開発の衛星画像解析プラットフォーム「Ridge SAT Image Analyzer(RSIA)」を活用してAIモデルを開発。AIモデルの特性を活かしつつ目視判読との効率的な作業分担を行い、時間短縮・精度向上を検証する。
また、(2)ではALOS-2とALOS-4のセンサー間での大規模土砂移動箇所の差分解析手法、SAR画像/光学画像の互換性検証、山地災害判読業務への利活用検証を行う。

編集部からのお知らせ

2024年のSPACE Mediaの記事更新は本日で最後となります。
2024年12月28日〜2025年1月5日の期間は更新を休止し、2025年1月6日より2025年の更新を開始いたします。

来年は皆さまのビジネスや日常の気づきとなるような宇宙のコンテンツを、より充実させてお届けしていきますので、引き続きのご愛読をどうぞよろしくお願い申し上げます。

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