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インターステラテクノロジズ、ロケット燃料に「牛ふん」由来の液化バイオメタンを選定

宇宙輸送と宇宙利用を通じて地球の課題解決を目指す宇宙の総合インフラ会社インターステラテクノロジズ株式会社(北海道広尾郡⼤樹町、代表取締役社⻑ 稲川貴⼤)と、産業ガス大手のエア・ウォーター北海道株式会社(札幌市中央区、代表取締役社長 鹿嶋 健夫)は2023年7月21日、北海道十勝地方の未利用バイオマスである家畜ふん尿から製造した液化バイオメタン(Liquid Biomethane「以下LBM」)を、超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」の燃料として使用すると発表した。

インターステラテクノロジズは、エア・ウォーター北海道より供給されるLBMを使い、今秋にも北海道大樹町の宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」内の射場でエンジン燃焼器単体試験を実施する予定だ。

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Credit: インターステラテクノロジズ株式会社

性能や調達性に優れ、地球環境に優しい燃料でロケット打上げ

液化メタンは燃料としての性能や価格、扱いやすさ、入手性、環境性などが総合的に優れた燃料で、米SpaceXの「スターシップ」をはじめ、世界的に採用するロケット会社が増えている。
ロケット燃料には不純物を含まない高純度メタンが必要なため、インターステラテクノロジズは燃料に液化メタンを選定した2020年以来、その調達方法を検討してきた。

一方、エア・ウォーターグループは北海道十勝エリアを中心に、家畜ふん尿から発生するバイオガスを、液化天然ガス(LNG)の代替燃料となるLBMに加工し、域内で消費する地域循環型のサプライチェーン構築に取り組んでいる。

今回の試験で使用するLBMは、バイオガスの主成分であるメタンを分離・精製し、約-160℃で液化したもの。純度は99%あり、従来のロケット燃料に使用されてきた高純度メタンと同等で、調達性にも優れているという。

LBMの使用で地球温暖化や環境問題対策に寄与

エア・ウォーター北海道は、2021年5月よりインターステラテクノロジズの企業向けパートナーシッププログラム「みんなのロケットパートナーズ」に加入しており、これまでも各種試験で使用するLNGの供給やタンクの製造をはじめ、技術・物資面で支援を行ってきた。

メタンは二酸化炭素に次いで影響の大きい温室効果ガスであり、牛から出るメタンの排出量低減は地球温暖化における課題となっている。
また、地域内では家畜ふん尿に起因する臭気や水質汚染などが社会問題とされてきた。

両社はLBMの使用により、ロケット重量の大半を占める燃料をサステナブルにすることで地球温暖化対策に寄与するとともに、エネルギーの地産地消や環境問題対策にも取り組むとしている。

Credit: インターステラテクノロジズ株式会社