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異業種・未経験から宇宙業界への就職・転職を後押し【SPACETIDE Career Connectレポート】

2024年12月7日(土)、東京都千代田区のTokyo Innovation Base(TIB)を会場に、一般社団法人SPACETIDE主催のキャリアイベント『SPACETIDE Career Connect』が行われた。

宇宙業界への就職・転職をテーマとしたこのイベントは今年で3回目。これまでは同団体が開催するカンファレンスなどに付随するイベントとして開催されていた(参考記事)が、今回初めて、宇宙業界への就職や転職に興味をもつ人に向けた単独のイベントとして開催された。

ここでは、当日の会場の様子を紹介する。

宇宙ビジネスの将来性は? どんな人材が求められるのか? SPACETIDEの石田真康氏が解説

イベントでは、はじめにインプットセッションとしてSPACETIDE代表理事 兼 CEOの石田真康氏が「宇宙産業の現在地と未来 – 宇宙産業で働くとは -」と題したプレゼンテーションを行った。

インプットセッションで宇宙産業について解説するSPACETIDE代表理事の石田真康氏

プレゼンテーションで石田氏は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)といった政府機関や大手の航空宇宙企業が取り組む領域だと思われがちな宇宙開発・宇宙ビジネスは、この10年で様変わりしたと指摘。宇宙領域へ投資を行う大手企業は100社以上に及び、国内の宇宙スタートアップも100社を超え上場企業も生まれ始めたと説明した。

また、市場規模についてはさまざまな推計があるものの、現状だと世界全体で約50兆円。しかし、世界経済フォーラム(WEF)とマッキンゼー・アンド・カンパニーのレポートでは2035年に1.8兆ドル(約200兆円)規模にまで成長すると予測されていることも紹介した(参考記事)。

加えて石田氏は、宇宙産業を構成する主な事業分野を①人工衛星を中心に「宇宙を使い倒す」ビジネス、②月や火星など「宇宙に行く」ビジネス、そして①や②の実行を支える「縁の下の力持ち」になるビジネス、の3つに分類。

具体的なイメージは、①が地図アプリ、衛星通信や衛星放送など人工衛星やそのデータなどを活用する事業、②は研究や探査、また将来的な旅行や居住など宇宙へ行くことを目的とする事業、③はモノや人を宇宙へ届けるロケットの打上げ(宇宙輸送)や、宇宙ごみ(スペースデブリ)対策など宇宙を持続的に利用できるようにするための事業、といったようなものだ。

そして、日本国内では宇宙開発や宇宙ビジネスを後押しする「宇宙戦略基金」(参考記事)などの政策が動き出し、これまで資金がないことが一番の課題だった宇宙業界に投資が集まってきた状況だと語った。

世界の成長産業と目され、投資も集まってきた宇宙産業。そんな宇宙業界の次なる課題は「人材不足」だと石田氏は指摘。

やるべきことがあり、資金もあるが、それを実行する「人」がいないのが日本の実情で、石田氏らの試算によると、業界全体で毎年、最低でも5,000人規模の人材が必要だという。

衛星データが地図アプリなどに生かされ生活に浸透している今、通信やソフトウェア、AIの知見をもつエンジニア・データサイエンティストといった職種が求められているのはもちろん、企業活動に欠かせない経営層、営業やマーケティング、人事、法務、会計、PR(広報)といったコーポレート関連の職種を募集している企業も多い。

このようにさまざまな求人ニーズがあるものの、たくさんの人に宇宙業界への就職を考えてもらうには、まだ情報が足りていないのが現状。石田氏はCareer Connectで直接企業とコミュニケーションを取ることで宇宙ビジネスへの疑問解消の一助としてほしいと話し、プレゼンテーションを締めくくった。

宇宙ベンチャーから大企業までが大集合 盛況の企業ブース

会場では、新進の宇宙ベンチャーから宇宙事業に取り組む大企業まで幅広く、また領域としても衛星データ活用から人工衛星・ロケット開発、軌道上サービス、宇宙港開発・運営など、バラエティに富んだ企業がブースを構えた。

出展企業は下記の20社(アルファベット順)。ブースでは各社の人事・採用担当者などが直接来場者と会話し、事業内容や募集中のポジションなどについて説明を行っていた。

ステージでは各社による自社紹介ピッチも行われた。約600名の参加申し込みがあったとのことで、会場は立ち見が出るほど賑わった

業界をリードする起業家・ベンチャーキャピタリストが語る宇宙産業の魅力と成長性

今回のSPACETIDE Career Connectでは、来場者に向け、宇宙ビジネスへの理解を深めるためのステージプログラムも行われた。

1つ目は、メタップス創業者で宇宙開発プラットフォームに取り組むスペースデータ代表の佐藤航陽氏とForbes Japan執行役員でWeb編集長の谷本有香氏によるパネルセッション「異業種から宇宙への参入 – 宇宙ビジネスの可能性 -」。

ITという異業種から宇宙ビジネスに参入した佐藤氏は、今の宇宙産業は198090年代のコンピュータ産業に似た状況だとし、パソコンというハードが当たり前になってGAFAがインターネットのサービスをつくるという産業の転換が起きたように、10年後、20年後には今のインターネットのように誰もが宇宙を利用して事業を立ち上げるような時代が来ると考えていると語った。

谷本氏から、日本の成長の道筋、立ち位置について聞かれた佐藤氏は、日本独自の強みであるアニメやエンタメコンテンツなどの知的財産(IP)と宇宙をかけ合わせる、ハードではなくソフトとして宇宙を捉えていく取り組みが勝ち筋になるのではと答えた。

また、異業種から宇宙ビジネスに挑んだ自身の経験から、参入は非常に大変だったと振り返り、熱意と粘り強さも必要だと語った。

パネルセッションに登壇したスペースデータ代表取締役社長・佐藤航陽氏(右)と、Forbes Japan執行役員 Web編集長の谷本有香氏(左)

2つ目のパネルセッションは、宇宙ベンチャーへの投資を多数行うインキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹氏と石田氏による「宇宙ビジネスをプロデュース – 成長産業に期待すること -」。

インキュベイトファンドは宇宙スタートアップに投資を行う国内屈指のベンチャーキャピタルだが、宇宙ビジネスへの投資のきっかけを聞かれた赤浦氏は、さまざまな企業に投資を行う中で、もっと大きなインパクトを起こせないかと考えた先に宇宙ビジネスがあったと話した。

今から約10年前に、月面探査等を行うispace社に投資した赤浦氏だが、宇宙ビジネスには純粋な「ワクワク」があるとその魅力を語る一方、海外ではSpaceXを率いるイーロン・マスク氏の動向が国際関係に影響を与える状況になっていることには違和感があるとも話し、急速に進展する状況を見ているだけではなく、日本として独自のインフラを構築していく必要にも言及した。そして最後に、ぜひ皆さんに宇宙業界に飛び込んでいっていただきたい、と聴講者へエールを送った。

インキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹氏(左)とSPACETIDE代表理事・石田氏によるパネルセッションの様子

インプットセッションで石田氏が示したように、今まさに、さまざまなスキル・経験・知見をもつ人材が求められている宇宙産業は、限られた人だけが働く領域ではなくなっている。10年、20年後のキャリアを考えるとき、宇宙は見逃せない選択肢の一つだといえるだろう。

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