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世界最大級の総合デジタルテクノロジー展「CES2025」で、宇宙技術・産業はどう取り上げられたか? #2 海外企業の取り組み

米ラスベガスにて2025年1月7日から10日にかけて開催された世界最大級の総合デジタルテクノロジー展「CES(Consumer Electronics Show)2025」。従来は家電見本市と紹介されていましたが、近年では最新テクノロジーやその活用事例の発表の場として注目を集めています。

CESでは最新テクノロジーと親和性のある“宇宙技術・産業”に関連する展示・講演もあるため、SAPCE Mediaでは、3回にわたってその模様を紹介します。

第2回となる今回は、海外企業による宇宙ビジネス関連の展示の様子をお伝えします (第1回では日本企業の取り組みを紹介していますので、こちらもぜひご覧ください)。

米国の出展企業

2024年度の宇宙関連予算が約797億ドル(日本の16倍以上)にも及び、世界の宇宙産業を牽引する米国では、近年SpaceX社をはじめとして多くの民間企業がその存在感を示しています。CES2025でもAmazon Web Services(以下、AWS)をはじめいくつかの企業が出展、参加しました。

Amazon Web Services:低遅延のブロードバンド接続サービスを実現する大規模衛星コンステレーション

世界最大のクラウドコンピューティングサービスを展開するAWS社は、2025年の初期サービス開始を目指す、衛星ブロードバンド「Project Kuiper」を紹介しました。Project Kuiperは地球低軌道(LEO)に多数の衛星を打ち上げる衛星コンステレーションによって、高速かつ低遅延なブロードバンド接続サービスを提供する計画で、すでに2機のプロトタイプを打ち上げています。AWSは2023年に、日本電信電話株式会社、株式会社NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ株式会社、スカパーJSAT株式会社と戦略的協業に合意しています。

Project Kuiperの展示
撮影:SPACE Media編集部

衛星ブロードバンド通信は、通信設備の整っていないエリアや、移動中の飛行機や船へのデータ通信を可能にし、災害時など通常の通信網が使用できない状況でもサービス提供できること等から近年注目されている技術です。SpaceX社のStarlinkは、2020年から試験運用が開始、2024年9月には加入者が全世界で400万人に達し、現在は日本でも全域でサービスが提供されています。

《参考》
Project Kuiper

《関連記事》

Federal Laboratory Consortium:NASA技術の商用利用・民間移転を目指す

Federal Laboratory Consortium for Technology Transfer(以下、FLC)は、米国を拠点とする連邦研究所の全国的なネットワークで、ミッション技術をグローバル市場向けの商用製品に移転するための戦略や機会を検討するフォーラムを提供しています。NASA技術の商用利用・移転を目的とした、「NASA Technology Transfer Program」なども推進し、以下の内容を公開・整備しています。

  • 特許ポートフォリオ(Patent Portfolio)
  • ソフトウェアカタログ(Software Catalog)
  • NASA技術のライセンス取得プログラム
  • スピンオフ事例の紹介
  • NASA技術移転スタートアッププログラム ※現在該当HPの紹介はなし

《参考》
NASA TECHNOLOGY TRANSFER PROGRAM

ECOATOMS:軌道上での材料科学の最前線を行くスタートアップ

ECOATOMS社は宇宙空間でのロット生産(batch-production)とオンボード・コンピュータに特化した宇宙製造企業で、NASAのパートナーとして、宇宙空間で製品を製造、試験するために設計されたペイロードの開発を推進しています。宇宙空間の特殊な条件を活用した化合物や医療機器を開発することで、宇宙ベースのバイオメディカル製造におけるイノベーションを目指しています。2023年には、Blue Origin社のロケット「New Shepard」 を用いて実際のペイロードを打ち上げました。

ECOATOMS社の展示
撮影:SPACE Media編集部

《参考》
In-Space Biosensors Batch Coating Using Self-Assembled Monolayers

韓国の出展企業

CES2025スタートアップ展示でかなりの面積を占めたのが、韓国企業の展示でした。宇宙領域においては、2024年に韓国航空宇宙局(Korea AeroSpace Administration:KASA)を設立し、宇宙探査の民間部門への移行を目指しています。

そんな韓国からの宇宙関連企業の展示をいくつかご紹介します。

IOPS:韓国政府の衛星運用・ミッション制御

韓国航空宇宙研究所(Korea Aerospace Research Institute:KARI)からスピンオフした企業のIOPS社は、韓国政府の衛星を管理・運用しています。CES2025では、衛星運用プラットフォームである「IOPS SPACE」を発表しました。このプラットフォームは、衛星のリアルタイム追跡や軌道予測、AIベースでのミッションコントロール、取得データの分析ソリューション等を包括した、衛星運用のためのオールインワンソリューションとのことです。

また、IOPS SPACEの他に以下のようなサービスを提供しています。

  • IAIP(IOPS Automation and Intelligence Package):衛星テレメトリによる早期異常検知と衛星コンステレーションの接触スケジューラ
  • IMDP(IOPS Multi-purpose Detection Package):小型物体検出・分類システム
  • IRS(Image Receiving Subsystem):衛星画像の受信・保存、前処理およびカタログ作成
  • ACS(Antenna Control Subsystem):地上アンテナ運用、衛星軌道データ提供
IOPS SPACEのサービスイメージ
Credit: IOPS

《参考》
IOPS
IOPS SPACE

SPACEMAP:衛星軌道の予測による衝突回避サービス

宇宙領域把握(Space Domain Awareness:SDA)のためのプラットフォームを開発するSPACEMAP社は、従来のプラットフォームに各種コラボレーション機能を追加した、「42Talks」を紹介しました。42Talksは、衛星とデブリの4Dモデリングに合わせて、テキスト/音声/ビデオなどによる仮想会議の実施が可能なコラボレーションプラットフォームです。

また、SPACEMAP社は、米宇宙軍の宇宙領域把握プロジェクト「SDA TAP LAB」にも継続的に参加し、米宇宙軍とソリューション販売契約も締結しています。

42Talksのサービスイメージ
Credit: SPACEMAP

《参考》
SPACEMAP

Stellarvision:SARデータを中心とした衛星データ分析プラットフォーム

SARデータを中心とした衛星データ分析を専門としているStellarvision社は、衛星データを簡単に検索および分析できるプラットフォーム「Stellar Space Hub」を紹介しました。衛星データ活用のユースケースとして同社は以下のテーマに注目しています。

  • 炭素排出(Carbon Emissions)
  • 農業生産(Agriculture Production)
  • 防災(Disaster)
  • 海洋資源(Marine Resources)
  • スマートシティ(Smart City)
  • 防衛(Defense)
Stellar Space Hub画面イメージ
Credit:Stellarvision

《参考》
Stellarvision

CONTEC:シームレスな衛星通信を支える地上局ネットワーク

CONTEC社はKARIからスピンオフした地上局ネットワークの構築および衛星運用を行う企業です。2025年3月現在、世界9カ国10カ所の地上局を運営しています。また、CONTECグループには、地球観測衛星を開発するContec Earth Service、超低軌道(VLEO)で運用される小型衛星群用のカメラを開発するContec Space Optics、ルクセンブルク支社としてグローバルマーケティングを推進するCONTEC Spaceなどの企業が存在し、2023年には韓国の宇宙企業として初めて国内上場を果たしました。

CES2025では、衛星内のコンピュータの開発や衛星通信サービスを手掛けるAsia Pacific Satelliteと共同でブースを出展し、各種製品・サービスの紹介とともに、CONTEC社が主催する韓国最大の国際宇宙会議「ISS 2025」が紹介されました。

CONTECブースの様子
撮影:SPACE Media編集部

《参考》
CONTEC
Asia Pacific Satellite

その他の国の出展企業

Apogeo Space(イタリア):IoT向けピコ衛星開発

イタリアの宇宙企業Apogeo Space社は、IoT向けのピコ衛星コンステレーションの開発を行っています。IoT衛星とは、地上や海上のセンサ等で収集した情報を集約し、地上局にまとめてデータ送信する目的の衛星で、地上の一般的な通信電波が届かない地域での活用が期待されています。また、衛星IoT通信サービスとして、以下のプランを提供しています。

  • 初期プラン(4カ月まで):定額100€/月(デバイス数無制限、1日1,000通のメッセージ)
  • 標準プラン(5カ月以降):1デバイスあたり1日最大2通のメッセージは無料、以降は0.01€/メッセージ
Apogeo Space社のIoTピコ衛星(重量1kg程度)
撮影:SPACE Media編集部

《参考》
Apogeo Space

VAISALA(フィンランド):BtoB向け気象予報プラットフォーム

フィンランドの産業用計測機器メーカーであるVAISALA社は、AIを活用した気象データプラットフォーム「Xweather」を紹介しました。Xweatherは高精度な気象データを、天候による影響が大きい企業に提供、交通道路の安全性担保のために活用するなど、ビジネス向けに提供することを目的としたプラットフォームです。提供されるデータには、地上の各センサーで取得したものに限らず、衛星を用いて取得したものも含まれます。

VAISALAブースの様子(球体に投影されているのがXweather)
撮影:SPACE Media編集部

《参考》
Xweather

CES2025全体の中で、宇宙に関連する展示はほんの一部であるものの、見た目のキャッチーさに起因するのか、どのブースも比較的参加者が多く、盛り上がっている印象を受けました。

また、韓国に関しては宇宙に関連する出展企業が多いこととともに、公的研究機関からスピンオフした民間企業が多く存在することに驚きを覚えました。CESは最新テクノロジーの中でも人の生活に身近なものが多い印象ですが、宇宙技術・産業についても、今後より人の生活に身近になることで、CESへの出展が増えることを期待します。

CES2025レポートの最終回となる第3回では、月周回ミッション「アルテミス2」に関する基調講演の模様をダイジェストでお伝えします。

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