2024年7月19日、ヨーロッパの22カ国が加盟する欧州宇宙機関(ESA)が「ESA 宇宙環境レポート2024」(ESA Space Environment Report 2024)を公表した。
このレポートは、ESAのスペースデブリオフィスが2016年から毎年発行しているもので、世界の宇宙活動の概要を提供するとともに、国際的なデブリ削減対策が、宇宙飛行における長期的な持続可能性をどの程度向上させているかを判断することを目的としている。
レポートでは、2023年も引き続きスペースデブリの数が増加を続けていることを指摘。
現在、約35,000の物体が宇宙監視ネットワークによって追跡されており、このうち、アクティブなペイロードは約9,100。残りの26,000は10cm以上の大きさのスペースデブリだという。
また、壊滅的な被害を引き起こす恐れがある1cm以上の大きさのスペースデブリの実数は100万を超えると指摘している。
レポートによると、2023年はペイロード打ち上げ数が再び過去最高となり、そのほとんどが大規模な商用通信衛星のコンステレーションを構成する衛星だったという。
稼働中の衛星の多くは高度500〜600kmの地球軌道に位置しており、通信衛星コンステレーションにとって都合のよい高度であるため、今後もこの高度に衛星が集中することになると予測されている。
軌道上が混雑すると衝突のリスクが高まるだけでなく、衝突によって破片などが生じることでさらに衝突のリスクが増すという悪循環が生じることになる。
こうした状況を打開するため、寿命を迎えた衛星を軌道から離脱させるためのスペースデブリ軽減ガイドラインの遵守を向上させる取り組みが強化されてきた結果、大気圏に再突入する衛星の数は増加している。
このレポートからは、人工衛星を活用した地球観測や通信ソリューションの提供が宇宙ビジネスの主流となる中で、衛星の安全を脅かすスペースデブリの問題が顕在化しつつあることが見て取れる。
日本ではデブリ除去を中心とした軌道上サービスの実現を目指す企業が複数登場しているが(参考記事1、参考記事2、参考記事3)、「軌道の持続可能性確保」は喫緊の課題となっているといえるだろう。
レポートの全文はこちらから閲覧できる(英語)。