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NASA、アルテミス2以降のミッションの延期を発表 熱シールドの損傷は原因判明
2024年12月5日、アメリカ航空宇宙局(NASA)は会見を開き、月探査計画「アルテミス計画」で使用する宇宙船「オリオン」の熱シールドで起きた問題の原因とともに、ミッション実施時期の延期を発表した(NASAによる発表)。
オリオンは2022年11月にアルテミス計画の第一弾として無人で打上げられ、同年12月に地球に帰還した(参考記事)が、大気圏突入時の光熱から船体を保護する熱シールドが想定以上に損傷しており、原因究明が進められていた。
調査の結果、熱シールドに用いられた素材の内部で発生したガスが抜けきらなかったために亀裂や剥落の発生につながったという。
エンジニアチームはこれらの教訓をふまえてアルテミス3用のオリオン宇宙船の組立作業を進めているというが、環境制御および生命維持システムに対処する時間も反映し、月周回軌道に向かうアルテミス2が2026年4月、有人月着陸を目指すアルテミス3が2027年半ばと、打上げ目標はずれ込むこととなった。
アークエッジ・スペースとNew Space Intelligenceが協業 衛星データを活用した新事業創出を目指す
2024年12月6日、小型衛星コンステレーションに関する総合的なソリューション提供を行う株式会社アークエッジ・スペース(東京都江東区、代表取締役 CEO 福代孝良、参考記事)と、衛星データの卸売を行う株式会社New Space Intelligence(山口県宇部市、代表取締役 CEO 長井裕美子)は、衛星画像解析ソリューション等の協業体制構築に向けた覚書を締結したと発表した。
今後、両社で双方の技術力とリソースを活用しながら衛星データを活用した新事業の創出やアプリケーションの開発を進めていくという。
具体的な取り組みは下記の通り。
衛星データの校正および新規校正手法の開発
アークエッジ・スペースが今後打上げる超小型衛星で取得するデータの精度向上を目的に、校正技術の研究および新規手法の共同開発を実施。より高精度な衛星データ解析手法の構築を目指す。
新規事業およびアプリケーションの開発
衛星画像データを基に、地球観測、農業、都市計画、災害対策、環境保護など多岐にわたる分野で新たなサービスやアプリケーションの創出を目指す。
国内外の行政機関および国際機関との共同マーケティング
衛星を活用した新規事業・アプリケーション開発に関連し、国内外の行政機関、国際機関、および類似する団体と連携して共同マーケティング活動を展開。国際的な市場へのアクセスを拡大し、衛星画像解析の価値普及に貢献する。
衛星画像市場の拡大に資する活動
学術研究、民間企業との共同プロジェクト、教育・啓発活動など、衛星画像市場全体の拡大に寄与する幅広い取り組みを推進する。
ベガCロケット打上げ 地球観測衛星「Sentinel-1C」の軌道投入に成功
中央ヨーロッパ時間の2024年12月5日午後10時20分(現地時間 午後6時20分)、フランス領ギアナの欧州宇宙港から、地球観測衛星「Sentinel-1C」を搭載したベガC(Vega-C)が打上げられた(ESAによる発表)。
打上げから約2時間後に軌道投入と通信の確立が確認され、打上げは成功した。
Sentinel-1C衛星は、欧州宇宙機関(ESA)と欧州委員会(EC)の地球観測プログラム「コペルニクス計画」を構成する地球観測衛星で、2022年8月に故障により運用を停止した「Sentinel-1B」の後継機。合成開口レーダーによる高解像度画像を取得する。
打上げに使用されたベガCロケットは2022年12月に打上げに失敗、今回が飛行再開の打上げとなった。
木造人工衛星「LignoSat」が「ウッドデザイン賞2024」奨励賞を受賞
2024年12月6日、住友林業株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 光吉敏郎)は、「木造人工衛星LignoSat」が「ウッドデザイン賞2024」上位賞の奨励賞(審査委員長賞)を受賞したと発表した。
LignoSatは、京都大学と住友林業が約4年かけて開発した木造人工衛星で、1辺が100mm角のキューブサットと呼ばれるサイズ。筐体の6面に住友林業の北海道紋別社有林から切り出したホオノキ材を使用している。
宇宙ごみ(スペースデブリ)の増加を防ぐため、運用を終えた人工衛星は大気圏に突入させて燃焼させることになっているが、金属製衛星は燃焼の際にアルミナ粒子と呼ばれる微粒子を発生させ、気候や通信などに悪影響を及ぼす可能性がある。これに対し木材は大気圏再突入で燃え尽きるため、将来的に木造の人工衛星が増えればこの影響の低減が期待できる。
同社では、「宇宙空間での木材利用が公式に認められたことは、宇宙業界にとっても木材業界、森林業界にとっても非常に貴重な第一歩」としている。
なお、今回はLignoSatと同時に10階建木造実大振動台実験「NHERI TallWood Project(住友林業検証フェーズ)」も奨励賞を受賞した。